昼休みの小さな散歩の途中で、新宿区須賀町にある永心寺(えいしんじ)に出会いました。オフィス街の喧騒から数分離れるだけで、門前にひときわ静かな空気が流れていて、足を止めずにはいられませんでした。時間は限られていましたが、まずは山門をくぐって一礼し、本堂に手を合わせて帰ることにしました。
境内の案内によれば、永心寺は江戸時代の建物が今も残る貴重なお寺だそうです。山門は薬医門という形式で、切妻屋根を載せた端正な姿をしています。掲げられた扁額には慶応三年(1867年)の年号が刻まれており、江戸の末の気配がふっと立ちのぼるようでした。装飾の意匠は元禄から18世紀中頃の作例に似るとのことで、時代の移ろいを背負いながらも、門は静かに町を見守り続けてきたのだと感じました。
奥に進むと本堂が現れます。こちらは享保十一年(1726年)の建立で、方丈型と呼ばれる間取りをとり、北面中央に向拝を備えています。内部は二列六室の整然とした構成で、広縁がめぐるつくりだと説明にありました。江戸の寺町の景観を今に伝える建物として新宿区の有形文化財に指定されているとのことで、震災や戦災の難を免れ、本堂と山門がそろって残っている点がとても貴重だそうです。忙しない昼の時間帯でも、柱や梁に染みこんだ時間の厚みは十分に伝わってきました。
滞在は長くはできませんでしたが、参拝をして心を整えるひとときを得ました。高層建築の谷間にこうした江戸の記憶が息づいていることに、東京という都市の層の厚さをあらためて感じます。次はもう少しゆっくり訪れ、山門の細部や本堂の間取りをじっくり見てみたいと思います。昼休みの偶然の寄り道が、小さな歴史散歩になりました。
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