ホイアン市場を北に抜け、関公廟(かんこうびょう、クアンコン廟、Quan Cong Temple)に来ました。 ホイアン旧市街の中心部に足を踏み入れると、異国情緒あふれる華やかな建築とカラフルな街並みが一気に視界に飛び込んできます。その中でも、ひときわ中国風の色彩を帯びた「関公廟」は、歴史あるホイアンにおいて外せない観光スポットのひとつです。ベトナムの町並みに溶け込みつつも、赤と金を基調とした廟の装飾は目立ち、その存在感から自然と足が向かう方も多いかもしれません。 この廟は、1653年に建立され、中国の三国志に登場する武将・関羽を祀る場所として知られています。関羽は「義」と「忠」の象徴として中国やアジア各地で広く信仰され、特に商売繁盛や安全、成功などを願う人々の心の拠り所となってきました。17世紀頃のホイアンは日本や中国をはじめアジア各地から商人が集う国際貿易港であり、多国籍の文化が出会う場所でもありました。そんな華人コミュニティの信仰と生活を支えた関公廟には、当時の街の国際色豊かな空気が今も息づいています。 廟の正面には中国伝統の意匠が細やかに施され、漆塗りの表面や鮮やかな彩色の飾りが訪れる人の目を楽しませてくれます。内部に入ると関羽の像が厳かに鎮座し、その周囲には忠義の部下や息子たちを象った像も並んでいます。観光客だけでなく地元の方々も香を手向けに訪れる光景を目にすると、華やかな観光地でありながら、ここが今なお人々の信仰を支える「生きた」場所なのだと感じずにはいられません。 広々とした中庭には香炉や石造の置物などが点在しており、陽の光の下では一層美しい空間が広がります。廟のなかには大きな香炉が据えられていて、ここで祈りを捧げるときには静かで厳粛な雰囲気に包まれます。ホイアン旧市街全体がランタンの灯りに彩られる夕方以降に訪れると、昼間とは違った幻想的な表情を見せてくれるので、可能であれば時間帯をずらして複数回足を運ぶのもおすすめです。 関公廟のあるホイアン旧市街はユネスコ世界遺産に登録されており、付近には同じく華人によって建てられた福建会館や広東会館、日本橋(来遠橋)、歴史的な商家などが点在しています。古くから商業の町として発展し、様々な文化が融合してきたホイアンをより深く知りたいなら、関公廟をはじめとするこうしたスポットを数か所めぐってみると、時代背景や人々の営み...