八月の盛り、筑波山に出かけました。 まずは麓の筑波山神社に参拝し、気持ちを整えてからケーブルカー乗り場へ向かいます。いつもの散歩の延長のつもりでジーンズ姿でしたが、周りは本格的な登山装備の方が多く、少し場違いだったかなと思っていると、切符売り場で「女体山駅まで行けなくて戻る方も多いですよ。返金はできませんが大丈夫ですか」と念を押されました。覚悟を決めて、上りはケーブルカー、下りはロープウェイのセット券を購入し、そのまま急勾配を上るケーブルカーに乗り込みました。 山頂駅に着くと、涼やかな風とともに視界が開け、筑波山神社の男体山御本殿に手を合わせます。筑波山は二峰からなる山で、男体山と女体山にそれぞれ御本殿があり、古くは伊弉諾尊と伊弉冉尊を祀る山として信仰を集めてきました。『万葉集』にも歌われた名山で、男女一対の峰に夫婦和合や豊穣の祈りが重ねられてきたことを思うと、社殿の朱色がいっそう印象深く見えます。 ここからが本番です。ロープウェイの女体山駅を目指して、岩だらけの尾根道を進みます。切符売り場の方の言葉どおり、想像以上に急で、両手を軽く使う場面もありました。 途中で有名なガマ石を見つけると、口のかたちがなるほどガマらしく、昔からここで売られた「ガマの油売り口上」の面影まで浮かんでくるようでした。 距離は長くないので、呼吸と足運びを整えながら進むと、体感で三十分ほどで女体山駅に到着しました。女体山御本殿にも参拝し、二峰それぞれに手を合わせられたことに小さな達成感を覚えます。 下りはロープウェイでつつじヶ丘へ。改札で子どもが切符を切ってくれる小さなサプライズがあり、イベントだったのか常設の体験だったのかは分からないものの、旅の一場面として心が和みました。 つつじヶ丘駅の周辺には、今は使われていない遊具がぽつりぽつりと残り、昭和の行楽地の記憶が風に揺れているようでした。かつては家族連れでにぎわったのだろう景色に、時の流れを感じます。 ガマ大明神の前で記念写真を撮り、ちょうど昼時になったので軽く食事を済ませ、東京へ戻りました。 軽装でも行けるだろうと高をくくっていた自分への警鐘と、山から受け取ったご褒美が同居する一日でした。歴史と信仰の山は、ケーブルカーやロープウェイで気軽にアクセスできる一方で、山頂の岩稜はやはり山らしい厳しさを持っています。次はもう少し装備を整え、双耳峰の...