桜島を一周したあと、尚古集成館(しょうこしゅうせいかん) / 仙厳園(せんがんえん)までタクシーで移動しました。 鹿児島を訪れた際に、ぜひ立ち寄ってほしい場所のひとつが「尚古集成館」です。尚古集成館は、鹿児島市の吉野町にあり、錦江湾や桜島を望む風光明媚な場所にたたずんでいます。この資料館は、島津家の歴史や、幕末から明治にかけての薩摩藩の近代化の歩みを伝える貴重な博物館です。 館内に入るとまず驚かされるのは、建物そのものの重厚な美しさです。実はこの建物は、1865年(慶応元年)に建てられた旧集成館機械工場を利用したもので、日本の産業近代化の先駆けとなった貴重な西洋式石造建築です。現在は国の重要文化財にも指定されており、まさに「展示物そのもの」といえる存在感があります。 展示では、島津家の代々の当主が収集・使用してきた武具や調度品、さらには幕末期の薩摩藩が進めたガラス製造、紡績、機械工業などの記録を見ることができます。特に、薩英戦争や西南戦争に関する資料には、薩摩という地が日本史の重要な転換点で果たした役割の重みがひしひしと伝わってきます。 館内をめぐるうちに、島津斉彬の先進的な思考と行動力がいかに画期的だったかがよくわかります。斉彬は西洋の技術や学問を積極的に導入し、日本の自立した近代化を目指しました。その姿勢は、後の明治維新の原動力ともなったと言えるでしょう。 尚古集成館の魅力は展示だけではありません。隣接する仙巌園や薩摩切子の工房、さらには美しい海と桜島を望む景色もまた、訪れる人の心を豊かにしてくれます。歴史に詳しくない人でも、目の前に広がる実物や風景を通して、自然と当時の人々の息づかいを感じられるはずです。 館は年中無休で開館していることが多く、仙巌園との共通入場券もあるので、ゆっくりと一日かけて歴史と文化にひたることができます。鹿児島の旅に、尚古集成館という知の窓を加えてみるのも素敵な体験になることでしょう。 仙厳園 鹿児島を旅するなら、ぜひ訪れてほしい場所のひとつが「仙巌園(せんがんえん)」です。桜島を望む錦江湾のほとりに広がるこの庭園は、江戸時代初期の1658年(万治元年)に島津家第19代当主・島津光久によって築かれました。以来、歴代の島津家当主が愛し、手を加え続けてきた場所であり、今もその気品と風格を感じさせてくれます。 仙巌園の最大の魅力は、...