タリン観光の2日目に旧市街を歩き、三人姉妹や聖オレフ教会を見たあとで、この教会の前に立ちました。細く伸びる塔と、もう一つの丸みを帯びたドーム状の屋根が並ぶ姿は、タリン旧市街の建物群の中でも独特で、黒みを帯びた屋根と白い壁の対比がとても印象に残りました。中には入らず外から眺めただけでしたが、それでもこの建物が、旧市街の中に幾層もの歴史を抱え込んでいることは十分に感じられました。中世都市タリンの街並みの中にありながら、いかにも西欧の教会とは少し異なる表情を見せるところに、この町の複雑で豊かな歴史が表れているように思います。 この教会の起源は13世紀にさかのぼります。もともとはシトー会の聖ミカエル女子修道院の中心となる教会として建てられたもので、現在見えている姿も、そうした中世の宗教施設としての出発点を土台にしています。タリン旧市街は、北ドイツやスカンディナヴィア、ロシア方面との交流の結節点として発展してきた町ですが、この教会もまた、その長い歴史のなかで宗教的・政治的な変化の影響を受け続けてきました。ひとつの建物が何世紀にもわたって役割を変えながら残り続けているところに、ヨーロッパの都市の奥深さを感じます。 現在のこの教会が正教会としての性格をはっきり持つようになったのは、1732年に正教会の聖堂として再建されたことによります。外から見たときに感じた、細い塔と丸いドームの組み合わせや、少し東方的にも見える印象は、そうした歴史と無関係ではありません。タリンは長いあいだ西欧世界だけでなくロシアとも深く関わってきた都市であり、この教会の姿には、そうした文化の接点としてのエストニアの位置がよく表れているように思います。旧市街を歩いていると中世の商人都市としての顔が強く見えてきますが、その中にこのような正教会の聖堂があることで、タリンという町が単純な一色では語れないことを実感します。 さらに19世紀前半には内部の大規模な改修も行われ、教会は現在につながる姿へと整えられていきました。とくにこの教会は、18世紀初頭に制作されたバロック様式のイコノスタシスで知られており、エストニアでも重要なバロック美術のひとつとされています。今回は外観を見るだけで次の聖霊教会へ向かいましたが、もし中に入っていたなら、外の落ち着いた白壁と黒い屋根の印象とはまた違う、豊かな宗教美術の世界に触れられ...