都心とは思えないほど緑の濃い杜に包まれた大宮八幡宮へ足を運びました。参道は幅が広く、両脇の木々が真夏の光をやわらげてくれます。鳥居をくぐると空気がひんやり変わり、「東京のへそ」とも呼ばれるこの地の静けさが、歩みをゆっくりにしてくれました。境内が広いことでも知られる神社で、23区内では有数の規模だと実感します。
この日は、コロナ禍の「疫病退散」を願うのぼりがはためき、社殿前には茅の輪に倣った「笹の輪」が据えられていました。古来の大祓の作法にならい、「蘇民将来の子孫也」と唱えながら輪をくぐって厄を祓う趣旨で、境内産の笹竹で奉製されたものだそうです。折しも夏—人びとの健康を思う祈りが、青い葉音に重なって聞こえるようでした。
参拝を済ませてから境内を歩くと、由緒の案内に足が止まります。創建は康平6年(1063)。前九年の役に際し、源頼義がこの地で八幡神の加護を覚えて戦勝を祈願し、凱旋後に石清水八幡宮から御分霊を勧請して社を構えたのが始まりと伝わります。以後、関東の武士からの崇敬も厚く、例祭は毎年9月15日に営まれてきました。
ご祭神は八幡大神(応神天皇)と、その父である仲哀天皇、母の神功皇后の「親子三神」。この母子の結びつきから、ここは「子育て・安産・縁結び」の社として知られ、戌の日には安産祈願を受けに多くの方が訪れます。境内の案内にも「子育て厄除け八幡さま」の呼び名が掲げられており、日常の願いを静かに受け止めてくれる場所であることが伝わってきます。
社殿や門、清らかな手水舎を順に眺めながら、木陰の濃淡と遠くの太鼓の音に耳を澄ませました。疫病退散の願いが全国に満ちていたあの夏、笹の輪をくぐり、静かに手を合わせたひとときは、長く心に残る参拝となりました。
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