板橋駅からいくつかの神社を参拝したあと、石神井川を渡って寿徳寺へ向かいました。
境内に入る前からまず目に飛び込んできたのは、川沿いに鎮座する谷津大観音です。観音橋の北詰、寺へと上る坂の入口に据えられた堂々たる聖観音菩薩像で、平成8年(1996)に当時の住職の発願で建立されたものだと知り、地域を見守る目印のような存在感にうなずきました。
そのまま北へ歩くと寿徳寺に着きました。近づくほどに建物の意匠が現代的で、街の生活のなかに溶け込む寺のたたずまいに少し驚きます。寿徳寺は北区滝野川にある真言宗豊山派の寺院で、本堂前の大イチョウにまつわる信仰から「谷津子育観音」としても知られています。大イチョウの皮を供え祈願すると母乳がよく出る——かつてはそんな素朴な願いを携えた人びとの参拝が続いたことを思うと、都市のなかの寺が果たしてきた役割の広さを感じます。
入口では新選組局長・近藤勇の石碑にも手を合わせました。寿徳寺は近藤勇の菩提寺として知られ、板橋駅東口近くにある墓地は同寺の境外墓地です。近藤は慶応4年(1868)に板橋で斬首され、首は京都へ、胴は滝野川に葬られたと伝わります。のちに新選組の永倉新八らの尽力で1870年代に墓所が整えられ、今も命日の4月25日前後には法要が営まれているとのこと。駅前の喧騒と、史跡としての静けさが隣り合う風景に、幕末の時間の厚みが重なって見えました。
谷津大観音の大きな手と、モダンな寺の建物、そして石碑に刻まれた名。川風に吹かれながらそれぞれを順に巡ると、日常の道筋に歴史の層がふっと立ち上がってきます。
散歩がてらに訪れたはずが、帰り道には、地域の記憶を受け継いできた人びとのまなざしに触れたような、静かな余韻が残りました。
旅程
板橋駅
↓(徒歩)
近藤勇と新選組隊士供養塔
↓(徒歩)
すがも鴨台観音堂
↓(徒歩)
瀧野川八幡神社
↓(徒歩)
↓(徒歩)
↓(徒歩)
板橋駅
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- 瀧野川八幡神社
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