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森アーツセンターギャラリー:ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト

六本木ヒルズ展望台 東京シティビューで時間をつぶしたあと、13時になったので、森アーツセンターギャラリー(Mori Arts Center Gallery)の特別展「古代エジプト」に行きました。

森アーツセンターギャラリーは現代美術館なので、美術的な視点での展示になっているかと思いましたが、歴史博物館のような説明と展示で、歴史が好きな私としては大満足でした。

この展覧会では、ブルックリン博物館が所蔵する約150点の古代エジプトの貴重な遺物が展示されており、彫刻、棺、宝飾品、陶器、パピルス、そして人間やネコのミイラなど、多彩なコレクションを通じて、古代エジプト文明の謎と魅力を探求できます。 

本展の監修は、エジプト考古学者の河江肖剰氏が務めており、最新の研究成果や映像、音声を交えて、古代エジプトの人々の生活や信仰、ピラミッド建設の謎、ミイラに込められたメッセージなど、深く掘り下げて紹介しています。 

古代エジプトには「ドゥアケティの教訓」(The Teachings of Dua-Khety または The Satire on the Trades とも呼ばれる)という教訓文学の作品があります。この作品は、中王国時代(紀元前2000年頃)に書かれたとされ、パピルス文書として伝わっています。

「ドゥアケティの教訓」は、父であるドゥアケティ(Dua-Khety)が息子に書記(官僚)としての道を進むように教える形式で書かれています。父親は、他の職業に比べて書記という職業がいかに優れているかを強調し、教育を受けることの価値を説きます。特に、書記以外の職業の辛さや苦労を誇張的に描写し、対比的に書記の仕事の利点を引き立てています。

「監視官ニカーラー」(Nykara)は、エジプト第5王朝(紀元前25世紀頃)の貴族で、当時の高位官僚の一人として知られています。彼の名前は、彼の墓(マスタバ)や遺物に残された碑文から知られています。ニカーラーは「監視官」と呼ばれる高位官僚の一人で、古王国時代のエジプトにおいて、国家の重要な職務を担っていました。「監視官」という肩書きは、主に労働者や建設プロジェクトの監督、国家資源の管理を指すことが一般的です。

古代エジプトの信仰には、個々人の日常生活に密接に関わる存在として敬われた(うやまわれた)神様もいます。「ベス神」(Bes)は、家庭や個人の守護神として信仰された非常にユニークな神です。彼は古代エジプトの主流の神々とは異なり、特定の寺院を持たず、その姿や役割は、親しみやすく、保護的な性格が特徴です。ベス神は、比較的小さな背丈で、顔が広く、ヒゲをたくわえたコミカルで威厳のある姿で描かれることが一般的です。体型はずんぐりとしており、しばしば舌を出したり、踊ったりする姿で表現されます。左27番がベス神の顔を象った(かたどった)壺です。

「タウェレト」(タウエレト、Tawaret、Taweret 、Taueret、Tawret、意味は「偉大なもの」)は、特に妊娠や出産の守護神として信仰された女神です。彼女は人々の日常生活に密接に関わる神であり、母親や子供の安全を守る存在としてエジプト全土で信仰されていました。

「ヘケト」(ヘカト、Heget、Heket、Heqet、Heqat)も、出産や再生の守護神として信仰された女神です。ヘケトはカエルの頭を持つ女神として描かれ、生命の誕生や繁栄を象徴する存在でした。左の緑色のものがタウェレトの護符で、右がヘケトを表しているカエルの護符です。

こちらはクフ王(Khufu、古代ギリシャ語名ではケオプス)のものと言われている彫像の東部です。クフ王は、古代エジプト第4王朝(紀元前26世紀頃)のファラオであり、特にギザの大ピラミッドを建造したことで知られる王です。クフ王に関する記録や遺物は少ないものの、彼の治世や建築事業は、古代エジプトの歴史において非常に重要な位置を占めています。

ネフェルイブラー(Neferibre)は古代エジプトにおいて「神官」として重要な役割を果たした人物です。「ネフェルイブラー」は「ラー(太陽神)の美しき心」という意味を持つ名前です。これはエジプトの王名や高位の神官の名前として使われることがあり、太陽神ラーへの信仰の強さを反映しています。「ネフェルイブラー」という名前が王や神官の称号の一部として記録されることがあり、特定の人物や時代によって異なる文脈で言及される可能性があります。左の金の指輪には「クフ王」と書かれていますが、指輪の主はネフェルイブラーと記されています。

ペピ1世(Pepi I)は、古代エジプト第6王朝(紀元前24世紀頃)のファラオであり、エジプト古王国時代を代表する重要な王の一人です。彼の治世は、エジプトの中央集権的な政治体制を強化し、経済や宗教の発展を推進した時代として知られています。また、彼の時代にはピラミッド建設や貿易、周辺地域への遠征が盛んに行われました。こちらのペピ1世の像はひざまずいており、神像の前に置かれていたと推測されます。

ラメセス2世(Ramses II または Ramesses II)は、古代エジプト第19王朝(新王国時代)のファラオであり、紀元前1279年頃から1213年頃までの67年間という非常に長い治世を誇りました。彼は「偉大なるラメセス」や「建築王」としても知られ、エジプト史上最も有名で成功したファラオの一人です。カルナック神殿、ラムセウム、アブシンベル神殿なども建設しました。

ネフェルティティ王妃(Nefertiti)は、古代エジプト第18王朝のファラオ、アクエンアテン(アメンホテプ4世)の正妃であり、古代エジプト史上最も有名で影響力のある女性の一人です。彼女はその美しさと、アマルナ時代における宗教的および政治的な重要な役割で知られています。娘のアンケセナーメンはツタンカーメンの妻で、ネフェルティティはツタンカーメンの義母にあたります。

ホルス(ホル、Horus、Hor)は、天空神であり、しばしば鷹または鷹の頭を持つ人間の姿で描かれます。王権の守護神として、エジプトのファラオはホルスの地上での化身とみなされました。ホルスは、父オシリスの復讐のためにセト神と戦い、勝利を収めた神話で有名です。ホルス神を崇拝し、その神殿や儀式に関わった神官のミイラとカルトナージュです。カルトナージュとは、亜麻布やパピルスを石膏や樹脂で固めて作られたミイラの覆いや棺の装飾材のことです。これに絵画や装飾が施され、ミイラを保護すると同時に宗教的・芸術的な目的も果たしていました。

解説も非常に分かりやすく、展示点数も非常に多く見ごたえのある特別展でした。

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