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6月, 2025の投稿を表示しています

織物参考館・紫:紀元前の知恵から現代技術へ、桐生で体感する織物の進化

群馬県桐生市の織物参考館・紫を訪れました。朝から岩宿遺跡や桐生明治館、桐生織物記念館、桐生天満宮を巡った後、歴史ある織物の町をさらに深く知りたいと思い、足を運びました。 館内に入ると、まず目に飛び込んできたのは、エジプト最古の織機の図です。ここから時代を遡るように、世界各地の織機の資料や実物が展示されています。古代ギリシャの花瓶に描かれた織物の工程や、江戸時代の型紙といった資料もあり、織物がどのように人々の暮らしに根付いてきたのか、その歴史を感じることができました。 展示されている織機は実に多彩で、ペルーのミピピポ族による原始的な機から、紀元前のおもり機、そして近代の力織機まで、時代ごとの進化がわかりやすく並べられています。それぞれの織機の仕組みや特徴を眺めながら、人類が創意工夫を重ねてきた歩みに思いを馳せました。 さらに隣の建物に移ると、実際に自動で動いている織機を間近に見ることができました。目の前で複雑な動きを繰り返す機械は迫力があり、織物がどのように生み出されているのかを体感できます。 建物の屋根は特徴的なのこぎり屋根になっており、一定の光を取り入れる工夫がされています。のこぎり状の屋根は、室内に自然光を安定して届けるだけでなく、機械が動く際の音を乱反射させて和らげる役割も果たしているそうです。このような設計にも、織物産業の知恵が詰まっているのだと感心しました。 織物参考館・紫の見学を通して、桐生の織物が世界や時代を超えて受け継がれてきた歴史の一端に触れることができました。技術や工夫の積み重ねが、現代に続く織物の町を形づくっているのだと改めて実感しました。 旅程 東京 ↓(新幹線/JR両毛線) 岩宿駅 ↓(徒歩) 岩宿遺跡 ↓(徒歩) 桐生明治館(旧群馬県衛生所) ↓(徒歩) 西桐生駅 ↓(徒歩) 桐生織物記念館 ↓(徒歩) 蒲焼 泉新 ↓(徒歩) 矢野園 ↓(徒歩) 有鄰館 ↓(徒歩) まちなか交流館 ↓(徒歩) 平田家住宅旧店舗 ↓(徒歩) 森合資会社事務所・店蔵・石蔵(旧穀蔵) ↓(徒歩) 一の湯 ↓(徒歩) 桐生天満宮 ↓(徒歩) 群馬大学工学部同窓記念会館(旧桐生高等染織学校講堂) ↓(徒歩) 無鄰館 ↓(徒歩) 旧曽我織物工場 ↓(徒歩) 金善ビル ↓(徒歩) 桐生倶楽部 ↓(徒歩) 織物参考館・紫 ↓(徒歩) 桐生駅 関連イベント 周辺のスポット...

桐生天満宮:繊維のまち桐生で出会う、歴史と文化の小径

桐生市を訪れると、まずその街並みの美しさに心を奪われます。晴れた日の散策は、岩宿遺跡や桐生明治館、桐生織物記念館といった歴史や文化を伝える場所を巡る旅となり、歩くごとに時代の移ろいを感じさせてくれました。その流れのなかで足を運んだのが、桐生天満宮です。 桐生市の中心部に鎮座するこの天満宮は、町の歴史とともに歩んできた古社であり、境内へはまず一の鳥居をくぐって進みます。 二の鳥居を通り抜けると、右手に機神神社(はたがみじんじゃ)が見えてきます。社殿には「栲幡千千姫命(タクハタチヂヒメ)」を祀り、ここが桐生最古の織物市場の発祥地である旨が掲げられていました。桐生が古くから繊維産業と深い縁を持つことを改めて実感させられ、この土地の産業と信仰のつながりに静かに思いを馳せました。 さらに奥へと進むと、太鼓橋が境内の雰囲気を和ませてくれます。 水が張られていませんでしたが、からくり人形水車も設けられており、水が流れているときは、訪れる人を楽しませてくれるのでしょうか。 神門――地元では「桐生門」と呼ばれる美しい門をくぐり抜けて、いよいよ拝殿へと向かいます。境内には凛とした空気が漂い、静かに手を合わせると、遠い昔から人々がこの地で祈りを捧げてきた重みを感じることができました。 拝殿参拝のあとは、宝船神社、神楽殿、赤城神社、春日社、そして神明宮・直日神社など、さまざまな末社も見て回りました。それぞれの社殿や建造物には、地域の信仰と歴史が色濃く刻まれており、一つひとつに違った趣があります。特に宝船神社や神楽殿の造りは、祭りや行事の際に賑わいを見せてきた様子を想像させ、地域の人々にとっての神社の役割の大きさを改めて感じました。 この後、私はさらに歩みを進め、群馬大学工学部同窓記念会館へと向かいました。桐生の町は、明治から昭和にかけての建築群が今も残り、歴史の重なりと現代の活気が同居する不思議な魅力を持っています。桐生天満宮の静けさと、街に息づく人々の営み。その両方に触れることで、旅の一日がより豊かなものになりました。 旅程 東京 ↓(新幹線/JR両毛線) 岩宿駅 ↓(徒歩) 岩宿遺跡 ↓(徒歩) 桐生明治館(旧群馬県衛生所) ↓(徒歩) 西桐生駅 ↓(徒歩) 桐生織物記念館 ↓(徒歩) 蒲焼 泉新 ↓(徒歩) 矢野園 ↓(徒歩) 有鄰館 ↓(徒歩) まちなか交流館 ↓(徒歩) 平田家住...

桐生市の歴史的な建造物群:西桐生駅、蒲焼 泉新、矢野園、有鄰館、まちなか交流館、平田家住宅旧店舗、森合資会社事務所・店蔵・石蔵(旧穀蔵)、一の湯、旧桐生高等染織学校講堂、無鄰館、旧曽我織物工場

群馬県桐生市は、江戸時代から続く織物の町として知られ、かつて「桐生新町(きりゅうしんまち)」と呼ばれた歴史ある地域です。市内には桐生明治館や桐生織物記念館、桐生天満宮、織物参考館・紫といった代表的な施設だけでなく、今もなお往時の面影を色濃く残す歴史的建造物が数多く点在しています。これらの建造物群は、伝統的な町並みや商家、蔵などが連なり、まるで時代を遡ったかのような雰囲気を味わうことができます。 特に「桐生新町」は、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されており、歴史と文化の香りを今に伝える貴重なエリアです。昔ながらの格子戸や石畳、重厚な蔵造りの家々が並ぶ風景は、歩くだけで桐生の長い歴史や人々の暮らしを感じさせてくれます。この記事では、そんな桐生新町の歴史的建造物群についてご紹介したいと思います。 西桐生駅 西桐生駅は、木造の趣ある駅舎が印象的な駅です。1928年(昭和3年)の開業以来、上毛電気鉄道の駅として、現在も多くの人々に利用されています。時代の移り変わりの中で、駅舎そのものは大きな改修を受けることなく、当時の面影を色濃く残しているため、歴史好きの方やレトロな雰囲気を味わいたい方にとって、心惹かれるスポットとなっています。 私が訪れた日は、真夏のような強い日差しが照りつける暑い日でした。ホームや駅舎の待合スペースでは、電車を待つ人々だけでなく、ベンチで休憩をとる方や、涼を求めて飲み物や軽食を楽しむ方の姿も見られました。昔ながらの木造駅舎にはどこか心地よい落ち着きがあり、旅の合間にほっと一息つくにはぴったりの空間です。 私も駅舎内の自動販売機でアイスクリームを買い、ベンチに腰掛けてしばし涼を取りました。外の暑さを忘れさせてくれるような、静かな時間が流れていたのが印象的です。長い歴史を持つ西桐生駅は、日常の中にそっと溶け込みつつ、訪れる人に昔懐かしい風景と、ひとときのやすらぎを与えてくれる場所だと感じました。 蒲焼 泉新 桐生の町を歩いていると、ふと香ばしいうなぎの香りが漂ってきました。そこにあるのが、天保元年(1829年)創業の老舗「蒲焼 泉新(いずしん)」です。長い歴史を持つうなぎ料理屋で、創業以来、地元の人々や旅人に親しまれてきました。建物自体がいつ建てられたものかははっきりとは分かりませんが、昭和61年に曳き移転されたという記録が残っており、それ以前からこの...

桐生織物記念館:蚕から帯まで、明治の面影とともに巡る、桐生の織物文化

朝から岩宿遺跡や桐生明治館を巡ったあと、桐生織物記念館(きりゅうおりものかいかん)に足を運びました。街の中心部にあり、かつて織物産業で栄えた桐生の歴史を肌で感じられる場所です。 記念館の展示室に入ると、まず目を引くのは桐生織の製作工程の数々です。シルクの光沢が美しい生地がどのようにして生まれるのか、その流れが丁寧に紹介されていました。素材となる絹糸や、養蚕業に欠かせない蚕の模型、繭玉など、原材料から織物ができるまでの道のりを見ることができます。 特に印象に残ったのは、八丁撚糸機(はっちょうねんしき)や検撚機(けんねんき)、手経(てべい)といった機械の展示です。昔ながらの技術が現代まで受け継がれてきたことが実感できました。また、ジャカード機の実物も展示されていて、複雑な模様を自在に織り上げるための工夫や技術力の高さに感心しました。 さらに、染色や仕上げの工程、出来上がった袋帯やなごや帯などの製品も展示されており、織物の美しさと職人の技が伝わってきます。お召織(おめしおり)をはじめとする桐生織の技法も紹介されていて、織物の奥深さに触れることができました。 桐生織物記念館は、単なる産業遺産の展示施設ではなく、桐生のまち全体が織物とともに歩んできた歴史を知ることのできる場所です。伝統技術を今に伝える職人たちの思いや、絹の持つ温かみを感じながら、心豊かなひとときを過ごすことができました。 旅程 東京 ↓(新幹線/JR両毛線) 岩宿駅 ↓(徒歩) 岩宿遺跡 ↓(徒歩) 桐生明治館(旧群馬県衛生所) ↓(徒歩) 西桐生駅 ↓(徒歩) 桐生織物記念館 ↓(徒歩) 蒲焼 泉新 ↓(徒歩) 矢野園 ↓(徒歩) 有鄰館 ↓(徒歩) まちなか交流館 ↓(徒歩) 平田家住宅旧店舗 ↓(徒歩) 森合資会社事務所・店蔵・石蔵(旧穀蔵) ↓(徒歩) 一の湯 ↓(徒歩) 桐生天満宮 ↓(徒歩) 群馬大学工学部同窓記念会館(旧桐生高等染織学校講堂) ↓(徒歩) 無鄰館 ↓(徒歩) 旧曽我織物工場 ↓(徒歩) 金善ビル ↓(徒歩) 桐生倶楽部 ↓(徒歩) 織物参考館・紫 ↓(徒歩) 桐生駅 関連イベント 周辺のスポット 西桐生駅 金善ビル 蒲焼 泉新 桐生倶楽部 地域の名物 関連スポット リンク 桐生織物記念館公式ウェブサイト 桐生織物会館旧館|桐生市ホームページ 桐生織物記念館 | 桐生テキスタイル公...

桐生明治館(旧群馬県衛生所):失われゆく道具に触れる、明治の香り漂う群馬の歴史建築

岩宿遺跡をじっくり見学した後、ゆっくりと歩いて桐生明治館へ向かいました。建物は明治時代に建てられた群馬県衛生所としての歴史を持ち、そのレトロな外観が周囲の景色に溶け込んでいます。 中に入ると、まず目を引いたのは群馬県衛生所としての役割や、当時の公衆衛生に関する資料でした。明治期の衛生行政がどのように進められてきたのか、写真やパネル展示で知ることができ、現代の暮らしと比較しながら考えさせられる内容でした。 展示室には、医薬品を収納するための百味箪笥や、足踏み式のリードオルガン、当時使われていたミシン、人力車、そして独特の形が印象的なだるま型自転車も置かれていました。電話や蓄音機など、今ではすっかり見かけなくなった懐かしい機器が並んでいて、過去の暮らしが身近に感じられます。 特に印象的だったのは、大正天皇が皇太子時代に立ち寄ったという貴賓室です。当時の格式や雰囲気が今もなお残されており、明治から大正にかけての歴史の一端を感じることができました。 館内には喫茶室もあり、ゆったりとした時間を過ごすことができます。蓄音機のやさしい音色を聴きながらコーヒーやデザートを楽しむのもこの場所ならではの魅力ですが、今回は直前にラーメンを食べてしまったため、デザートは断念しました。次に訪れる機会があれば、ぜひ喫茶室のスイーツも味わってみたいと思います。 桐生明治館をじっくり見学した後は、さらに桐生織物記念館まで徒歩で向かいました。明治の空気を色濃く残すこの建物と、そこで感じた時間の流れは、桐生という町の歴史と文化の豊かさを改めて教えてくれました。 旅程 東京 ↓(新幹線/JR両毛線) 岩宿駅 ↓(徒歩) 岩宿遺跡 ↓(徒歩) 桐生明治館(旧群馬県衛生所) ↓(徒歩) 西桐生駅 ↓(徒歩) 桐生織物記念館 ↓(徒歩) 蒲焼 泉新 ↓(徒歩) 矢野園 ↓(徒歩) 有鄰館 ↓(徒歩) まちなか交流館 ↓(徒歩) 平田家住宅旧店舗 ↓(徒歩) 森合資会社事務所・店蔵・石蔵(旧穀蔵) ↓(徒歩) 一の湯 ↓(徒歩) 桐生天満宮 ↓(徒歩) 群馬大学工学部同窓記念会館(旧桐生高等染織学校講堂) ↓(徒歩) 無鄰館 ↓(徒歩) 旧曽我織物工場 ↓(徒歩) 金善ビル ↓(徒歩) 桐生倶楽部 ↓(徒歩) 織物参考館・紫 ↓(徒歩) 桐生駅 関連イベント 周辺のスポット 地域の名物 関連スポット リンク 桐...

岩宿遺跡:三万年前の知恵と出会う、太古への扉をひらく旅

群馬県にある岩宿遺跡は、日本の旧石器時代研究の出発点ともいえる場所です。 晴天のなか、私は岩宿駅を降りてまず岩宿ドームへと向かいました。ドーム内では、岩宿遺跡の発見から研究の歩みまでをわかりやすくまとめたビデオが上映されており、これを観ることで、これから目にする地層や出土資料への期待が一層高まりました。 岩宿遺跡といえば、1946年(昭和21年)に相沢忠洋(あいざわ ただひろ)によって旧石器が発見され、日本にも旧石器時代があったことを決定づけた場所です。それまで「日本には縄文時代以前の文化はなかった」と考えられていた学説が覆され、考古学史上の大きな転機となりました。ドームの内部には、発掘現場の地層断面が再現されており、発掘の様子や発見当時の資料が丁寧に展示されています。実際に地層を眺めていると、遠い昔に思いを馳せずにはいられませんでした。 ドームを見学した後は、歩いて岩宿博物館へ向かいました。館内には、尖頭器や細石器といった石器がずらりと並んでいます。これらはおよそ三万年前、人類がこの地で狩猟採集生活を営んでいた証です。とくに細石器の繊細な加工や、用途ごとに形を工夫した技術の高さに、当時の人々の知恵と工夫を感じます。 黒曜石の石器は半透明で石器としての鋭さだけでなく、芸術的な美しさも感じましたが、学芸員の方の説明では、当時はアクセサリーなどの美術品としての用途は無かったそうです。機能美から芸術的な美を表現するには、さらなる人の進化が必要だったのでしょう。 また、相沢忠洋氏に関する資料コーナーでは、彼の情熱と地道な調査活動に触れることができ、現代に続く考古学研究の原点を見るような思いがしました。 展示のなかで印象的だったのは、オオツノシカやマンモスの骨格標本です。日本にもマンモスがいたことを物語るその巨大な骨は、ただただ圧倒されるばかりです。氷河期の環境や当時の動物相、人々の暮らしを想像しながら、悠久の時間の流れを感じました。 館外の広場もまた見どころが多く、日本の竪穴住居のほかに、ウクライナのメジリチ遺跡のマンモスの骨で作られた住居や、ドイツのゲナスドルフ遺跡の馬の皮で作られた住居が復元展示されています。日本のみならず、世界の旧石器時代の住居や暮らしぶりを身近に感じることができ、人類の多様な工夫や環境への適応力に驚かされました。 見学を終えた後は、徒歩で桐生市の桐生...