柴又帝釈天から東に向かうと山本亭(やまもとてい)に到着します。寅さん記念館への通り道としての役割もあり、素通りしてしまう人も多いかもしれません。
駅から歩いて少しだけ細い路地を抜けると現れる山本亭は、昭和の香りを残す一角にありながらも、どこか優雅で凛とした空気が漂っています。表門をくぐると、まるで別世界に迷い込んだかのような落ち着いた空間が広がり、静かな庭を目にした瞬間に日々の忙しさを忘れさせてくれます。木造の建物は大正から昭和初期にかけて建てられたものです。
山本亭はもともと、江戸時代後半から瓦製造を行っていた鈴木家の屋敷と工場がありました。1923年(大正12年)の関東大震災によって、瓦製造をやめてしまいました。台東区でカメラ部品を製造していた山本栄之助が、ここに居を移し整備しました。土蔵は山本亭の最も古い建造物で、山本が居を移す前の在ったようです。
山本亭全体としては書院造風の古風な日本建築ですが、時計などの洋風の要素が絶妙にマッチしているのが印象的でした。
唯一の洋間である鳳凰の間は、ステンドグラスから差し込む光が不思議と調和し、まるで大正ロマンの舞台にタイムスリップしたような感覚を味わえます。
山本亭の最大の見どころの一つが、手入れの行き届いた日本庭園です。池を配した庭には石灯籠が置かれ、草木の彩りが四季によって表情を変えます。特に晴れた日に縁側から眺める庭の美しさは格別で、池に映り込む空の青さまでもが一枚の絵画のように思えます。雨の日には水面に落ちる滴のリズムが心地よく、訪れるタイミングによって違う顔を見せてくれるのが魅力です。周囲の音がふと途切れたように感じるほど静かで、時間の流れがゆっくりと感じられます。
建物の一角には喫茶コーナーがあり、抹茶やコーヒーをいただきながら、静かに景色を堪能することができます。畳に腰を下ろし、正面に広がる庭を眺めていると、まるで映画のワンシーンに入り込んだような気分になります。都心からそれほど離れていない場所にもかかわらず、非日常的なくつろぎが味わえるのは、山本亭がひそやかに守り抜いてきた歴史と、建物や庭に宿る美意識があってこそなのでしょう。
地下に築かれた防空壕も山本亭の歴史遺産としての価値を高めています。
都会の喧騒を離れてゆったりとした気分を味わいたい方には、山本亭で過ごす数時間は最高の癒やしになるのではないでしょうか。和洋が美しく融け合った建築空間に身を置き、丁寧に維持された庭園の緑を眺めるだけで、心の中に余白が生まれていくような感覚があります。柴又散策の締めくくりとしても、ちょっとした日常のリフレッシュとしても、何度でも足を運びたくなる魅力が詰まった場所だと感じました。
旅程
東京
↓(鉄道)
金町駅
↓(徒歩約20分)
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矢切駅
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