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10月, 2005の投稿を表示しています

マッシモ劇場:ゴッドファーザーの悲劇の舞台、シチリアの華やかな劇場

パレルモ滞在3日目、念願のマッシモ劇場に足を運びました。シチリア最大の都市パレルモの象徴ともいえるこの劇場は、ゴッドファーザー PART IIIの重要な舞台としても有名で、パレルモを訪れるなら絶対に外せない場所だと心に決めていました。 マッシモ劇場の正面に立つと、その堂々としたネオクラシック様式のファサードが青空に映え、まさに「威風堂々」という言葉がふさわしい姿に圧倒されました。イタリア国内でも屈指の規模を誇るオペラハウスであり、ヨーロッパ全体でも6番目の大きさだそうです。劇場の建設は19世紀末、イタリア統一後の活気に満ちた時代に始まりました。設計は建築家ジョヴァンニ・バッティスタ・フィリッポ・バジーレによって進められ、1897年に完成。その後100年以上にわたり、オペラやバレエ、演劇などの芸術が上演され続けています。 この日は公演は見ませんでしたが、内部を見学できるガイドツアーに参加しました。中に足を踏み入れると、天井のフレスコ画や豪華な装飾、黄金色に輝く欄干が目に飛び込んできて、映画で見た華やかな世界そのままの空間が広がっていました。5階か6階ほどまである客席は螺旋状に並び、歴史あるヨーロッパのオペラハウスの風格を存分に感じられます。意外だったのは、舞台の奥行きや広さです。舞台に立つと、客席部分よりもむしろ舞台裏の方が大きく感じられ、舞台芸術へのこだわりが伺えました。客席自体は思ったよりもコンパクトで、観客一人ひとりに舞台の息遣いが間近に伝わるような設計になっているのでしょう。(当時のカメラでは、暗い舞台ではまともな写真が残っていませんでした。) 劇場の内部を歩きながら、20年前の自分(2025年に書いています)が「いつか正装してここでオペラを観る日が来るだろうか」と想像したことを思い出します。あれから年月が流れ、まだその夢は実現していませんが、あのときの憧れや高揚感は今でも色褪せることがありません。観光として訪れるだけでなく、現地の文化を深く味わうきっかけをくれる場所が、パレルモのマッシモ劇場なのだと改めて感じました。 映画や歴史だけでなく、自分のこれからの夢や人生にも静かに語りかけてくれるような特別な時間を過ごすことができたひとときでした。 旅程 (略) ↓(徒歩) Teatro Politeama Garibaldi ↓(徒歩) マッシモ劇場 ↓(徒歩) ...

ノルマンニ宮殿/パラティーナ礼拝堂/ヌォーバ門:ノルマンの栄光とアラブの輝き、シチリアに息づく異文化の交差点

イタリア、シチリア島のパレルモに来ました。パレルモ劇場は映画ゴッドファーザーの重要な場面の撮影に使われ、初代ゴッドファーザー自体がシチリアのコレルオーネ村の出身ということで、今回のシチリア観光の目的はゴッドファーザー関連のスポットです。ゴッドファーザーの前に、初日の本日はパレルモに慣れるために、パレルモ市内の史跡探索をしました。いくつかの教会、博物館などを見た後、ノルマンニ宮殿に来ました。 シチリア島の州都パレルモは、アラブ、ノルマン、ビザンティン、スペインといった多様な文化が交差した都市です。その豊かな歴史を肌で感じられる場所のひとつが、旧市街の一角にたたずむノルマンニ宮殿と、そのそばに立つ壮麗なヌォーバ門です。これらの建築物は、単なる観光名所ではなく、長い年月の中で織りなされた権力と芸術、信仰と統治の物語を今に伝えています。 ノルマンニ宮殿は、もともとは9世紀のアラブ支配時代に建てられたエミール(首長)の宮廷が起源とされています。1072年にノルマン人がパレルモを征服すると、彼らはこの建物をシチリア王国の王宮として大規模に改築しました。とりわけルッジェーロ2世の治世下においては、行政と儀式の中心としての役割を果たし、その後もホーエンシュタウフェン朝、アンジュー家、アラゴン家など、さまざまな王家によって引き継がれていきました。現在ではシチリア州議会の本拠地として使われており、過去と現在が同居する不思議な空間となっています。 この宮殿の中でもひときわ目を引くのが、1132年にルッジェーロ2世の命によって建てられたパラティーナ礼拝堂です。ここはまさにシチリアの多文化的アイデンティティを象徴する空間であり、ビザンティンの金色モザイク、アラブの幾何学装飾、ノルマンの建築技術が見事に融合しています。特にアプスに描かれたキリスト・パンタクラトールのモザイクは、その荘厳さと輝きに目を奪われます。木製の格子天井にはイスラム建築特有のムカルナス装飾が施されており、静謐な空間の中に異文化が共鳴しあっているのを感じ取ることができます。 ノルマンニ宮殿に足を運ぶ際には、ぜひその入口を彩るヌォーバ門にも注目していただきたいです。現在の門は1583年にスペイン副王の命により再建されたもので、チャールズ5世が1535年にチュニス遠征からの帰路にパレルモを訪れたことを記念して建てられました。この...