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熱海城:海のきらめきを一望する架空の城

熱海城は、旅の偶然が運んでくれた発見でした。朝いちばんでMOA美術館を鑑賞し、午後は地図を片手に起雲閣など市内を歩きながら、予定を決めずに足の向くまま進みました。海沿いの空気が澄んでいて、ふと視界に入ったのがロープウェイと「熱海城」の文字です。「こんなところにも城跡があるのか」と半ば歴史散歩のつもりで向かうことにしました。 ロープウェイから眺める相模灘の青さは冬晴れにいっそう冴え、港や町の起伏が一枚の地図のように広がっていきます。 山頂駅から天守へ向かうと、現れるのは堂々たる天守風の建物。中に入ると、1階には鎧や刀の展示が並び、武具の意匠や金具の細工を間近に見られました。 最上階の展望台はまさに圧巻で、陽光にきらめく海と町並みを一望できます。晴天に恵まれ、海と空の境目が薄く溶け合うような眺めにしばし見とれました。 下の階に降りると体験コーナーがあり、3階には浮世絵の春画展示が設けられていました(18歳未満は入場不可)。他ではなかなか見られないテーマですが、江戸の風俗や版画の技法を学ぶ上での資料性も高く、絵師ごとの表現や摺りの美しさに目を奪われます。さらに地下には子ども向けの無料ゲームコーナーもあり、家族連れでも過ごしやすい工夫が随所に見られました。 一方で、一般的な「城跡」に必ずあるはずの藩史や城主の系譜、築城経緯といった解説が見当たらず不思議に思い、その場で調べてみると、熱海城は史実の城ではなく、昭和期に観光施設として築かれた“模擬天守”でした。戦国・江戸の実在城を復元したものではなく、展望や娯楽を主目的に設計された、いわばテーマパーク型の城です。戦後の観光ブームの中で各地に生まれたこうした施設は、史跡としての厳密さよりも「眺望」「学び」「娯楽」を一度に体験できることを重視しており、熱海城もその文脈に位置づけられるのだと腑に落ちました。 史実の城ではないと知るとがっかりする人もいるかもしれませんが、実際に歩いてみると評価は少し違ってきます。展望台からの海景は、城郭に求めがちな“高台からの視界支配”を現代的に味わわせてくれますし、武具展示や浮世絵は「見る楽しさ」と「知る楽しさ」を両立させています。子どもが遊べるスペースまで揃っていて、家族で過ごす午後にも向いています。史跡の厳密な年表や縄張り図こそありませんが、海と町を一望する爽快さ、江戸文化に触れる意外性、そして気...

虹の郷:修善寺の湯帰りに、異国の街並みへ迷い込む散歩

修善寺の温泉街をひと通り歩き、独鈷の湯や足湯で体の芯がほどけたところで、地図の少し先に「虹の郷」が見えました。歩くにはやや距離がありますが、まだ午前中です。観光の続きというより、冬の伊豆を散歩しに行く気分で、温泉街の賑わいから少しずつ離れていきました。 入口でチケットを買ってパンフレットを広げると、想像以上に敷地が広く、イギリス村、カナダ村、匠の村など、文化の異なるエリアがゆるやかにつながっていることが分かります。そもそも虹の郷は、修善寺公園を前身とし、周年で楽しめる誘客施設として整備が進められ、1990年に開園した経緯があります。温泉地の「ついで」に立ち寄れる距離感でありながら、時間の使い方次第で一日分の散策にもなる、そんな成り立ちが納得できました。 入口付近のイギリス村に入ると、まず目に飛び込んできたのがロンドンの二階建てバスでした。テーマパークの“作り物らしさ”というより、街角に偶然置かれているような存在感があり、ここから気分が切り替わっていきます。トーイミュージアムでは、古いぬいぐるみやからくり人形が静かに展示されていて、子どもの遊び道具というより、時代ごとの「人が夢中になったもの」の記録として見えてきました。すぐ近くには鉄道模型の展示もあり、ミニチュアの世界が精密に組み上がっている様子に、旅先でふと時間を忘れる感覚がありました。 園内の奥へ進むには、ロムニー鉄道に乗るのが分かりやすい選択でした。イギリス村のロムニー駅からカナダ村のネルソン駅を結ぶこの園内鉄道は、英国製の15インチゲージ車両が走ることが特徴で、約2.4kmの区間を結んでいます。歩いても行ける距離ですが、冬の空気の中で小さな列車に揺られる体験は、移動そのものが「展示」の一部になっているように感じました。 ネルソン駅に着くと、建物の雰囲気ががらりと変わり、カナダ風の街並みが続いていました。コロナ前に最後に行った国がカナダだった、という記憶が不意に立ち上がり、旅先で別の旅を思い出す、少し不思議な懐かしさがありました。ネルソンホールは中が万華鏡のミュージアムになっていて、国内外の作家の作品が展示されていました。覗き込むたびに、同じ筒の中で色と形が別の宇宙を作り直していくようで、短い滞在でも気持ちの切り替えが起こります。 カナダ村をひと通り見学した後は、匠の村へ向かいました。途中の日本庭園は真冬で、花...

雲仙楽園:泰雅族の像に見守られて歩く遊歩道

烏来瀑布の轟音を背にロープウェイに乗り、谷を越えて山上の雲仙楽園へ向かいました。断崖の上に伸びる索道は、この楽園へのアクセスとして1960年代に整備されたもので、開業は1967年。 台湾最初期の本格的なテーマパークとして始まった歴史を思うと、揺れるゴンドラの時間にもどこか郷愁が混じります。 山上に着くと、川沿いの遊歩道に泰雅族(タイヤル族)の衣装をまとい、太鼓や弦楽器を手にした像が点在していました。 赤い橋がところどころで谷をまたぎ、緑の斜面に鮮やかなアクセントを添えています。烏来という地名自体が、泰雅語で「熱い水」を意味する言葉に由来するといわれ、温泉とともに先住の文化がこの地の基層を成していることを、静かな展示や意匠から感じ取りました。 しばらく進むと小さな湖に出ました。水面には鯉がゆったりと泳ぎ、ボートの桟橋や木立に囲まれた広場が穏やかな時間をつくっていました。観光施設として整えられた湖や散策路がありつつ、谷の風と水音がそれをのみ込むように調和しているのが印象的でした。 帰りは再びロープウェイで瀑布側へ戻り、麓では烏来老街の博物館に立ち寄りました。2005年に開館した烏来泰雅民族博物館では、顔の刺青文化や織物、祭礼から日々の暮らしまで、泰雅族の歴史と精神世界が丁寧に解き明かされています。山上で目にした像の所作や文様が、展示の解説と結びついて一層リアルに立ち上がり、この谷が単なる行楽地ではなく、文化の記憶が折り重なる場所であることを実感しました。 瀑布の白と深い森の緑、赤い橋の線、そして先住の物語。雲仙楽園の一日は、景色の美しさに歴史の層が静かに重なる、そんな時間でした。 旅程 (略) ↓(徒歩) 烏来瀑布 ↓(ロープウェイ) 雲仙楽園 ↓(ロープウェイ) 新北市烏来泰雅民族博物館 ↓(徒歩) (略) ↓ 中華民国総統府 ↓(徒歩) 二二八和平公園 ↓(徒歩) 台北駅 ↓(地下鉄) 忠孝復興役 ↓(徒歩) ホテル 周辺のスポット 烏來瀑布 烏來老街 リンク 全臺主題樂園網 - 全体のテーマパーク - 雲仙楽園