大阪府和泉市の池上曽根史跡公園を歩きました。午前中に弥生文化博物館を見学した流れで、午後二時ごろお隣の公園へ。 まずは池上曽根弥生情報館に立ち寄り、発掘資料の展示や集落復元のパノラマをさらりと確認しました。ちょうど直前に博物館で弥生の基礎をおさらいしていたこともあり、ここでは頭の中の知識と現地の地形を照らし合わせる感覚が楽しく、早々に屋外へ出て復元建物へ向かいました。 視界の奥にそびえる巨大な高床建物がひときわ目を引きますが、まずは手前の小さな茅葺の建物を覗きます。低い軒と素朴な壁、踏みしめる土の感触から、住まいのスケール感や生活の息遣いが想像できました。 少し進むと視界が開け、広場と柱列が現れます。儀礼や共同の場として機能したと考えられる空間で、集落の中心が人々の祈りと暮らしを結びつけていたことが、足元の土と風の流れから伝わってきます。 その先には「やよいの大井戸」と呼ばれる大きな井戸があり、木組みで補強された構造の力強さに目を奪われました。安定した水の確保は稲作社会の要であり、共同体の持続を支えたインフラだったはずです。井戸の前に立つと、遠い昔にここで水を汲み、調理や祭祀に用いた人々の所作が自然に思い浮かびました。 そして、いよいよ巨大な高床式建物「いずみの高殿」へ。高く持ち上げられた床、堂々たる柱、風をはらむ屋根が、ふだんの住居とは異なる特別な機能を担っていたことを静かに語ります。貯蔵、儀礼、あるいは首長の権威の象徴——いずれであっても、共同体の意思や富を集約し、配分する場だったことは間違いありません。足場を渡りながら上を見上げると、木材の組み合いと陰影が美しく、設計と施工の技術の高さに改めて驚かされました。 池上曽根は弥生時代に栄えた大規模集落のひとつとして知られ、稲作とともに発展した社会の姿を、平面の図や写真では届かない立体感で示してくれます。情報館の展示で得た知識を、そのまま地形・建物・風景のスケールに重ね合わせられるのがこの公園の良さで、歩を進めるごとに、家並み・広場・水場・高殿という配置から、集落の秩序や役割分担が自然と立ち上がってきました。 博物館での学びを抱えたまま現地に立つと、過去は単なる年代ではなく、具体的な生活空間として迫ってきます。小さな茅葺の暮らしから、共同の儀礼、そして水と食の管理へ。池上曽根史跡公園は、その連なりを一続きの体験として...