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9月, 2018の投稿を表示しています

英雄広場(ブダペスト):アンドラーシ通りから始まる祝祭の音楽と馬車レース

ブダペストの英雄広場を訪れました。アンドラーシ通りを歩きながら広場を目指しました。周囲には朝の光が降り注ぎ、ブダペストの街並みはどこか高揚感に包まれていました。 広場に向かう前に、私はまず市民公園内のジャーキ礼拝堂とヴァイダフニャディ城を訪れました。ジャーキ礼拝堂は中世ゴシックの雰囲気を漂わせていて、静かな空気の中に佇むその姿は、まるで歴史の一部がそのまま残っているかのようでした。ヴァイダフニャディ城もまた、異国情緒あふれる建築で、湖に囲まれた姿が幻想的でした。 その後、英雄広場へと足を運ぶと、そこでは普段とは異なる熱気に満ちていました。どうやら何かのお祭りが開催されていたようで、アンドラーシ通りや公園、広場一帯がイベントで賑わい、人々の笑顔があふれていました。特に印象的だったのは、英雄広場に設けられた円形のコースで行われていた馬車――おそらく古代の戦車を模したものなのでしょう――によるレースでした。馬たちが力強く駆け、観客たちの歓声が響き渡り、祝祭の雰囲気を存分に味わうことができました。 そして、広場に響き渡っていたのは、ヨハネス・ブラームスの「ハンガリー舞曲第5番」。ハンガリーといえばやはりこの曲、というほど有名なメロディが会場全体を包み、現地の人々も外国からの観光客も一体となって楽しんでいる様子でした。この音楽が流れる中で英雄広場の中心に立ち、ミレニアム記念碑とその周囲を囲む英雄たちの像を眺めると、まさにハンガリーの歴史と文化が現代と響き合う瞬間に立ち会っているような気がしました。 英雄広場自体は、ハンガリー建国千年を記念して1896年に造られた象徴的な場所です。中央には、建国の父アルパードとマジャール七部族の首長たちが並び、半円状の回廊には歴代の王や偉人たちの像が誇らしげに立っています。この場所は、ハンガリーという国の誇りと記憶が結晶した空間であり、どの像にもそれぞれの物語と時代の息吹が込められていることを感じました。 祭りの華やかさと歴史的な荘厳さが調和した一日。晴れやかな空の下、英雄広場に響く音楽と、人々のにぎわい。そのすべてが、ブダペストという街の魅力を存分に伝えてくれる体験でした。またいつか、あの場所でハンガリーの風を感じたいと思います。 旅程 ホテル ↓(徒歩) ブダ城 ↓(徒歩) Budavári Evangélikus Templom és G...

ブダ城:ドナウの丘に眠る王たちの記憶、ハンガリーの千年、戦火と再生の城

ハンガリーのブタペストに来ました。観光スポットのあちこちで「ハンガリー舞曲第5番」が流れていて、中世の建物群と相まって、世界中の人にとってハンガリーでイメージするのがこういう感じなんだなと妙に安心しました。二日目の本日は、まず鎖橋の西側のブタ地方から探索することにし、ブダ城を目指しました。 ブダペストを訪れるなら、誰もが一度は足を運びたくなるのが、ドナウ川の西岸にそびえるブダ城(Buda Castle)です。この壮麗な城は、まるでハンガリーの歴史そのものを象徴するかのように、丘の上に静かに佇んでいます。何世紀にもわたり王たちの居城として、また戦乱の舞台として栄枯盛衰を繰り返してきたこの城を訪れると、ただの観光地ではない重みを感じます。 その始まりは13世紀にさかのぼります。モンゴルの襲来に備えて、ベーラ4世が防衛のために築かせたのがこの城の前身でした。そして14世紀、神聖ローマ皇帝ジギスムントのもとで本格的な宮殿へと拡張され、やがてハンガリー王マーチャーシュ1世の治世において、ルネサンス文化の華を咲かせることになります。彼の治世下でブダ城はヨーロッパ随一の文化都市の中心となり、イタリアから芸術家や建築家が招かれて、ルネサンス様式の優雅な宮殿が築かれました。 しかしその栄光も長くは続きませんでした。16世紀のモハーチの戦いののち、オスマン帝国がブダを占領し、城は軍事施設として使われるようになります。この時期、かつての優雅な王宮は荒廃し、その後ハプスブルク家によって再び奪還されるまで、長い間その栄華を失っていました。 17世紀末、ブダがオスマン帝国から解放されると、ハプスブルク家は城をバロック様式で再建し、オーストリア=ハンガリー帝国時代には王権の象徴的存在として整えられていきました。しかし20世紀に入ると、新たな災厄が城を襲います。第二次世界大戦中、ドイツ軍とソ連軍の激戦に巻き込まれ、城は徹底的に破壊されてしまいました。 戦後の社会主義体制下で、ブダ城は再建されましたが、それは過去の王宮の精巧な再現というよりも、新しい時代にふさわしい文化施設としての再構築でした。現在では、ハンガリー国立美術館、ブダペスト歴史博物館、そしてセーチェーニ国立図書館が城内に設けられ、文化と学びの場として広く開放されています。 特に印象的なのは、美術館で目にするハンガリー近代の画家たちの作品...