アンドラーシ通りを歩いて市民公園へ向かいました。
並木の下には出店が並び、舞台や屋台の音が風に混じって届きます。途中で軍用車や戦車が展示されていて、アンテナを載せた車両の前には親子連れの行列ができていました。何の催しなのか分からないまま、そのにぎわいに背中を押されるように公園の奥へ進みました。
市民公園は、19世紀に沼地を整備して生まれたブダペスト最古級の公共の緑地で、1896年の建国千年祭には博覧会の舞台にもなりました。入り口側の英雄広場や、通りの地下を走るミレニアム地下鉄M1の存在が、その時代の熱気を今に伝えています。湖畔の遊歩道は穏やかで、夏は手こぎボート、冬はアイスリンクへと姿を変える水面が、季節ごとに公園の表情を塗り替えていくのだろうと想像しました。
水辺を巡ると、ヴァイダフニャディ城が木々の間から現れました。中世の古城のように見えますが、実は千年祭のために各時代のハンガリー建築様式を“見本帖”のように組み合わせて造られ、後に石造で恒久化された建物です。ロマネスク、ゴシック、ルネサンス、バロックが一つの輪郭に同居し、近くで眺めるほどに時代のレイヤーが積み重なっていることが分かります。内部には農業博物館が置かれていると知り、博覧会の記憶を今日に受け渡す役目を担っていることにも納得しました。
城の向かいに立つChapel of Ják(チャペル・オブ・ヤーク)は、13世紀のロマネスク聖堂で知られる西ハンガリーのヤーク修道院教会を模した礼拝堂です。分厚い柱頭や装飾の豊かなポータルが、褐色の石肌に陰影を刻んでいました。ちょうど新郎新婦がプロのカメラマンに写真を撮ってもらっていて、礼拝堂の前に広がる静かな時間と祝福の空気が、観光地の喧騒から切り取られた小さな舞台のように感じられました。
軍の展示と家族連れの笑い声、湖面のきらめきと石造建築の重みが、同じ公園の中で自然に混ざり合っていました。千年祭のために築かれた建物や地下鉄が今も市民の散歩道や憩いの場として機能していることに、ブダペストの時間の積み重ねの強さを思います。にぎわいの余韻を背に、夕方の光が城壁を黄金色に染めていくのを見届けてから、公園を後にしました。
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Budavári Evangélikus Templom és Gyülekezet
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(略)
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ハンガリー国立博物館
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ドハーニ街シナゴーグ/ Raoul Wallenberg Holocaust Memorial Park
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市民公園 / ヴァイダフニャディ城 / Jaki Chapel
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