仁徳天皇陵を見学したあと、そのまま近接している堺市博物館に向かいました。
大阪府堺市の大仙公園内に位置する堺市博物館は、かつて「東洋のベニス」と称された堺の歴史と文化を一望できる場所です。仁徳天皇陵古墳(大仙古墳)の南に建つこの博物館は、その地の利を活かし、古代から近代に至る堺の歩みを丁寧に紹介しています。
博物館に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのが古墳時代の展示です。堺が誇る百舌鳥古墳群のジオラマや出土品は、古代日本の葬送文化と権力の象徴としての前方後円墳のスケール感を伝えてくれます。中でも注目すべきは、実際に仁徳天皇陵に関係する副葬品の精巧なレプリカや、発掘調査によって明らかになった墳丘構造の紹介です。これにより、歴史の教科書でしか見たことのない風景が立体的に浮かび上がります。
展示は中世へと進み、堺が自治都市として栄えた時代へと移ります。自由都市堺の活気を伝える屏風絵や、堺の商人たちが取り扱った南蛮貿易の品々が並び、世界との交易により花開いた文化の豊かさを感じさせてくれます。
千利休ゆかりの茶道具や鉄砲の展示も、この地が技術と美意識の交流拠点だったことを物語っています。
また、近世・近代のコーナーでは、幕末から明治・大正期の堺の街並みや産業発展の様子が紹介されており、現代へとつながる都市としての堺の姿を知ることができます。昭和期の人々の暮らしや風景を再現したコーナーでは、来館者のノスタルジーを誘う展示が目を引きます。
特別展も定期的に開催されており、テーマごとに堺の新たな一面を掘り下げています。館内には映像コーナーや体験型展示も充実しており、子どもから大人まで楽しめる構成です。
堺市博物館は、ただの歴史展示施設にとどまらず、まちの記憶を未来へとつなぐ「生きたミュージアム」です。仁徳天皇陵の壮大な眺めとともに、悠久の時間を歩んできた堺の歴史にふれてみてはいかがでしょうか。
倭の五王
日本の古代史において、ひときわ異彩を放つ存在が「倭の五王(わのごおう)」です。彼らは5世紀から6世紀初頭にかけて、中国南朝へ使節を送り、積極的な外交を展開しました。日本という国が、国際社会の一員として姿を現した初期の記録でもあり、その活動は後のヤマト王権の発展に大きな影響を与えました。
「倭の五王」とは、中国の歴史書『宋書』や『南斉書』に登場する、「讃(さん)」「珍(ちん)」「済(せい)」「興(こう)」「武(ぶ)」の五人の王を指します。彼らの正確な実名や、日本側の歴史書における対応人物には諸説ありますが、いずれも大和政権の有力な支配者であったと考えられています。
倭の五王たちは、度重なる遣使を通じて、中国王朝から爵位を授かり、正式な国王として認められることを目指しました。当時の国際秩序において、中国の皇帝から爵位を受けることは、国家の正統性を認めてもらう意味を持っていました。彼らが求めた爵位は「安東将軍倭国王」といったものであり、軍事的な守備権を含んでいました。
特に、五番目の王である「武」は、『宋書』倭国伝の中で自らの支配範囲を「東は毛人五十五国を征し、西は衆夷六十六国を服し」と誇らしげに語っています。この記述から、倭の支配権が国内外に広がりつつあったことがわかります。
一方で、倭の五王時代の外交は、単なる名誉の獲得だけでなく、朝鮮半島を巡る勢力争いとも深く結びついていました。百済や新羅といった朝鮮半島南部の国家と連携し、あるいは対立しながら、倭国は影響力を広げようとしていたのです。
現在、倭の五王に直接結びつく遺跡は限られていますが、奈良・大阪地域に広がる巨大古墳群は、当時の王権の強大さを物語っています。大仙陵古墳(伝仁徳天皇陵)や今城塚古墳などに足を運ぶと、彼らが築いた国家の威容を肌で感じることができます。また、橿原考古学研究所附属博物館や堺市博物館では、古墳時代の文化や外交の背景を学ぶことができるのでおすすめです。
倭の五王は、まだ「日本」という国号も確立していなかった時代に、国際社会へ歩み出した先駆者たちでした。彼らの努力があったからこそ、その後の飛鳥時代、奈良時代へと続く日本の発展があったのだと思うと、古代史に対する興味がますます深まります。
旅程
東京駅
↓(新幹線)
新大阪駅
↓(地下鉄/近鉄)
土師ノ里駅
↓(徒歩)
古市古墳群
↓(徒歩)
古市駅
↓(近鉄)
百舌鳥駅
↓(徒歩)
↓(徒歩)
↓(徒歩)
上石津ミサンザイ古墳/履中天皇陵
↓(徒歩)
(略)
周辺のスポット
- 百舌鳥古墳群
- 大仙陵古墳/仁徳天皇陵
- 上石津ミサンザイ古墳(履中天皇陵)
- 田出井山古墳(反正天皇 百舌鳥耳原北陵)
- 大仙公園
地域の名物
- たこやき
- お好み焼き
- 串カツ
関連スポット
- 古市古墳群
- 誉田御廟山古墳(応神天皇陵)
- 市野山古墳(允恭天皇惠我長野北陵)
- 仲津山古墳(仲津姫命 仲津山陵)
- アイセルシュラホール
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