年越しの花火を一目見ようと、ドバイの中心で夜を迎えました。 真夜中にもかかわらず、周辺一帯は広く規制され、世界中から集まった人で埋め尽くされます。私は開始の六時間前から付近へい移動しましたが、それでも「歩ける程度に混んでいる」状態で、倒数の瞬間には拍手と歓声が湾の向こうまで連なりました。後から知ったのですが、この年越しイベントは年によっては百万人規模で集客したこともあるそうで、スケールの違いにうなずきました。 翌日の元旦のチケットが取れなかった悔しさを胸に、次の2日に気持ちを切り替えて最上階へ。思い切って「一番上まで行ける」高額チケットを選び、集合場所でガイドに続いて高速エレベーターへ乗り込みました。耳が少しつまる感覚とともに、上昇はあっという間。到着したのは「At the Top SKY」のデッキで、地上約555メートル・148階の世界でした。限られた人数しか入れない落ち着いた空間で、価格に納得する密度と静けさです。 ガラス越しに広がるのは、砂漠の上に描かれた都市の幾何学。 直下には音と光の演出で知られるドバイ・ファウンテンの湖がきらめき、前夜の喧騒を思い出させます。噴水は2009年の稼働以来、音楽とともに水柱を高く打ち上げる名物で、この塔の足元をさらに祝祭の舞台へと変えてきました。 地上に戻ると、塔と同じ開発地区に広がるドバイ・モールへ。巨大な商業空間の中にはトンネル型の水槽で知られる「ドバイ・アクアリウム&アンダーウォーター・ズー」や、オリンピック規格の「ドバイ・アイスリンク」まで揃っていて、高さだけでなく“広さ”でも来訪者を包み込む街のような存在だと実感しました。 この塔が持つ象徴性は数字だけでは語り尽くせません。開業は2010年、総高さは先端を含めておよそ829.8メートル、建築高さ828メートル。現在も世界一高い建築として、ドバイの変化と野心を示すランドマークであり続けています。 設計を担ったのはSOMの建築家エイドリアン・スミスで、平面はユリ科の花「ハイメノカリス」に着想を得た三つ葉形。下から見上げると段状に後退する層が風を逃がし、上へ行くほど細く、光の柱のように空へ溶けていきます。技術と象徴性が一体になった“垂直の物語”が、上るほどに体で分かるのです。 旅の記憶としては、元旦に登れなかった悔しさ、約五万円の思い切った投資、そして最上階の静寂が一つの線...