関東に住んで20年以上経ちますが、本日はじめての東京タワーに行きました。いつでもいけると思うとなかなか行かないもので、ふと思いついて行くことにしました。
夕暮れの赤羽橋駅から歩き出すと、ビルの谷間に薄く光るタワーが少しずつ姿を現しました。17時過ぎの東京はすでに日が落ちかけ、街の灯りと重なる鉄塔のシルエットが、これから始まる夜景への期待を高めてくれます。
入口付近では常設されている「東京ワンピースタワー」の案内が大きく掲げられており、作品を読んだことのない私にも、世界的人気の力強い発信として好印象でした。今回は寄らず、展望台のチケットを手にエレベーターへ向かいます。
メインデッキに着いたのは18時を少し回った頃でした。冬の夜の冴えた空気の中、東京の街は粒立つように明滅し、レインボーブリッジや高層ビル群が立体的に広がります。床のガラス越しに真下をのぞくと足元がふっと軽くなり、思わず体がこわばりましたが、地上333メートルへと伸びる塔の強靭さも同時に感じられました。
デッキには小さな神社も祀られており、最先端の都市景観に寄り添う日本らしい祈りの場に、そっと手を合わせました。
東京タワーは1958(昭和33)年、戦後復興の象徴として誕生しました。テレビ放送の時代を担う電波塔として関東一円をカバーし、東京スカイツリーが開業するまで日本一の高さを誇った存在です。エッフェル塔に着想を得た端正な外観は、時代が変わっても街の記憶として脈々と受け継がれてきました。展望台に立つと、その歴史が決して博物館の説明文ではなく、今この瞬間の夜景の中で呼吸していることに気付かされます。
展示やガラス床を楽しみ、名残惜しくも塔を降りると、地上はすっかり夜の顔になっていました。見上げれば、塔は七色に輝く特別なライトアップで空を染め、足元の人々の表情までも華やいで見えます。昼間のランドマークが、夜には光の塔として街に祝祭の気配を届けているのだと実感しました。
現代の娯楽やポップカルチャーを受け止めながら、古い祈りのかたちと戦後の記憶をも併せ持つ——東京タワーは、東京という都市の多層性そのものを凝縮した場所でした。あの日の澄んだ空気と、七色にきらめく塔の姿は、冬の夜のひんやりとした温度とともに、今も鮮やかに思い出されます。
旅程
赤羽橋駅
↓(徒歩)
↓(徒歩)
赤羽橋駅
関連イベント
周辺のスポット
- 増上寺
- 芝公園
コメント
コメントを投稿