豊島区の小さな粟島神社(あわしまじんじゃ)を訪ねました。
境内はこぢんまりとしていますが、まず目に入ったのは清らかな水をたたえる池でした。案内によれば自然の湧き水で満たされているとのことで、武蔵野台地の縁に点在する湧水の名残が、町なかの祈りの場にそっと息づいているのだと実感します。ビルの谷間で水面が風にさざめくさまを眺めていると、時間がふっと緩むようでした。社名の「淡島(粟島)」は、和歌山・加太の淡嶋神社に源流を持つ淡島信仰に通じ、女性の守護や病の平癒に霊験があるとして江戸でも勧請が広がったと伝えられます。小社ながらも、旅の安全と日々の無事を祈る人々の気持ちが積み重なってきたのでしょう。本殿に手を合わせると、境内の静けさが一層深く感じられました。
ふと見ると、フクロウの石像がこちらを見守っていました。池袋界隈でフクロウ像をよく見かけるのは、地名の「池袋」と「ふくろう(梟)」の語呂合わせから生まれた街のシンボルゆえです。駅構内の「いけふくろう」をはじめ、商店街の装飾やベンチ、モニュメントまで幅広く用いられ、〈福が来る〉〈不苦労〉といった当て字の縁起も手伝って、地域の親しみやすい守り神のような存在になっています。粟島神社のフクロウも、そんな街の文脈の中で、湧水の池とともに訪れる人をやさしく迎えているのだと感じました。参拝を終えて振り返ると、水面に揺れる木々の影が印象に残りました。都市の喧噪から一歩離れ、湧き水と小さな社に守られた空間に立つと、江戸からつづく信仰の糸が現在の日常へと静かにつながっていることに気づきます。次に訪れるときは、季節を変えてこの池の表情をもう一度見てみたいと思いました。旅程
椎名町駅
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粟島神社
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椎名町駅
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