上海で銀行の手続きを終えたあと、気分転換も兼ねて豫園へ向かいました。当時は投資のために中国の銀行へ元建てで預金をしに、定期的に上海を訪れていました。用事自体はどこか淡々としがちですが、そのぶん「せっかく来たのだから、上海らしい場所を歩いて帰りたい」という気持ちが自然に湧いてきます。
タクシーを降りた瞬間、景色が切り替わったのをはっきり覚えています。目の前には中国の古い町並みが広がり、看板には右から「薬局」と読める文字、そして屋根の先が空へ反り返るような輪郭が続いていました。高層ビルが増え、行くたびに街が更新されていく上海のスピード感とは別の時間が、そこだけ静かに流れているようでした。
豫園は、明代に潘允端が父・潘恩のために造営した江南式庭園として知られ、1559年に着工し1577年に完成したと伝わります。 いわば「親を喜ばせるための庭」という出発点がまず魅力的で、商都・上海のど真ん中に、孝や美意識を形にした空間が残っていること自体が面白いと感じます。その後、荒廃と修復を繰り返し、清代には再建され、近代以降も整備が進んで現在の姿になりました。
実際に歩いてみると、庭園の「見せ方」が日本庭園とはかなり違います。池のまわりには、ごつごつした岩が主役のように据えられ、輪郭の鋭さや陰影がそのまま景色の骨格になっていました。整えすぎず、自然の荒々しさを“素材”として活かす感覚が強く、そこに中国的な美しさを感じます。視線を少し動かすだけで、石、水、建物の線が組み替わり、同じ場所でも表情が変わって見えるのが楽しく、立ち止まる回数が増えていきました。
周辺の建物やお寺のような空間では、仏像や掛け軸が展示されているところもあり、観光地の賑わいの中に、信仰や伝統が混ざり合っているのが印象的でした。上海は金融やビジネスの顔が強い一方で、こうした場所に来ると、街の根っこにある文化の層に触れられる気がします。用事を片付けた「ついで」の観光だったはずなのに、結果としてこの日の上海でいちばん記憶に残ったのは、ガラス張りの新しいビル群ではなく、文字の向きや屋根の反り、石の質感といった、古い様式が放つディテールでした。
急速に変化する都市だからこそ、変わらない景色の価値が際立ちます。銀行で数字と向き合ったあとに豫園を歩くと、同じ「上海」という街の中に、速度の違う世界が共存していることがよく分かります。次に来るときも、きっと街はまた新しくなっているはずですが、そのたびに、私はまたこの“伝統の時間”に寄り道したくなるのだと思います。
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