イスタンブール観光の二日目の午後は、新市街地のガラタ塔に行きました。
本日は、朝から旧市街の王道を歩きました。地下宮殿のひんやりした闇を抜け、トプカプ宮殿の回廊で金角湾からの風を感じるうちに、石畳の街に少しずつ体が馴染んでいくのを覚えました。人混みを避けて横道を選んでいると、「昼、一緒にどう」と声をかけられます。旅先での唐突な誘いに一瞬身構えましたが、通りの真ん中にテーブルを出し、親戚一同が賑やかに食事を囲んでいる光景に肩の力が抜けました。「どうぞ」と手渡された家庭の味は素朴で温かく、知らない土地で不意に居場所をもらえたような気持ちになりました。
午後は新市街へ、と伝えると、口をそろえて勧められたのがガラタ塔でした。もともと行くつもりでしたが、地元の人の太鼓判に背中を押され、まずは塔を目指します。金角湾を渡ると、丘の上に円筒形の石塔がすっと立ち上がり、遠目にもよく目立ちます。ガラタ塔は14世紀、ジェノヴァ人が築いた街ガラタの城壁の一部として建てられたと伝わり、のちにオスマン時代には市中を見渡す火の見や、監視の拠点にも使われました。伝説では、17世紀に風乗りのヘザルフェン・アフメト・チェレビが、ここから翼で金角湾を越えたとも語られます。旧市街と新市街、ヨーロッパとアジア、歴史と現代を見晴らすこの塔は、まさに都市の「交差点」を象徴する存在だと感じます。
ところが、ふもとに近づくにつれ、現実はなかなか厳しいものでした。入口から蛇行する行列は、日本の人気ラーメン店さながらの長さで、しかも空模様が急変して雨粒が落ちてきます。展望階からの景色を楽しみにしていただけに残念でしたが、古い塔ゆえに入場者数を調整しているのかもしれません。長い時間をかけて積み上げられた石の静けさを壊さないための配慮だと考えると、列の長さにも納得がいきました。
結局この日は上ることをあきらめ、足元のカフェで雨宿りをしながら、塔の外壁を流れる雨筋を眺めました。金角湾の向こうに見えるモスクの群れ、背後に広がる近代的な街並み、そして自分の手前で立ち止まる雨――目の前の景色は、上から見下ろすのとは違う密度で胸に残ります。旅では、計画通りに行かない瞬間こそ、街の素顔に触れられるのかもしれません。昼食のテーブルで交わした「どうぞ」という一言と、上れなかった塔を見上げた首筋の雨の冷たさは、私にとって同じ一日の連続した記憶として、今も鮮やかに結びついています。次に訪れるときは、晴れ間と少しの余裕を連れて、あの展望階から金角湾に弧を描く街の輪郭を確かめたいと思います。
旅程
ホテル
↓(徒歩)
↓(徒歩)
↓(徒歩)
Sırkecı駅
↓(路面電車)
(略)
Karaköy駅
↓(徒歩)
↓(徒歩)
Karaköy駅
↓(路面電車)
Sırkecı駅
↓(路面電車)
ホテル
地域の名物
- シシケバブ
- ドネルケバブ
コメント
コメントを投稿