エドゥアルド VII デ・イングラテーハ公園から西へ歩き、アグアス・リブレス水道橋を目指しました。
坂の多いリスボンの街を進むうち、頭上や路地の先に小さなアーチが現れ、もう水道橋網の一部に入り込んでいるのだと気づきます。リスボンの水の道は本体だけでなく枝網まで含めると約58キロにも及ぶ大規模システムで、街のあちこちに痕跡が顔を出すのも頷けます。
まずは水道橋の博物館を訪ねましたが、この日は扉が閉ざされ、スタッフの姿もありませんでした。残念に思いながらも予定を切り替え、後でアモレイラスの「Mãe d’Água(マエ・ダグア)貯水池」に立ち寄ることに。ここはリスボン水の博物館が自由見学やガイドツアーを行っている場所で、巨大な貯水槽の内部や水路の仕組みを間近に感じられます。
水道橋本体は、眺めのよい高台に移動してからじっくり眺めました。アルカンタラの谷を跨ぐ区間は全長約941メートル、最大高およそ65メートルのアーチが谷底からそびえ立ち、石造建築の力強さを全身で示しています。先の見えないほど遠くへ伸びる輪郭を追っていると、都市の起伏と人間の技術が一つの線で結ばれていくようでした。
この巨大事業は18世紀、ジョアン五世の治世に着工され、1730年代に建設が本格化しました。1748年には未完成ながら給水を開始し、そのわずか数年後に起きた1755年の大地震にも主要部は耐え抜いています。バロック期の土木技術の粋を集めた尖頭アーチが、災厄をくぐり抜けて今に残ったという事実が、この風景にいっそうの重みを与えていました。
街の配水拠点となったアモレイラスのマエ・ダグア貯水池は1834年に完成し、ハンガリー出身の建築家カルロス・マルデルが設計しました。内部は5,500立方メートルもの水を湛えることができる石造の大空間で、静かな水面に反射する天窓の光が美しく、外から見ただけでは想像できないスケールを体験できます。
博物館に入れなかった悔しさは、貯水池の内部で水の道の実像に触れることでいつしか薄れていきました。リスボンの丘を越え、谷を渡り、何世代にもわたって人々の暮らしを支えた水が、この石のアーチと地下の回廊を通って確かに運ばれてきたのだと思うと、果てしなく続く灰色の線が、単なる遺構ではなく都市そのものの背骨に見えてきます。次に訪れるときは、見学可否や開館状況を公式情報で確認しつつ、水道橋上の遊歩ルートと貯水池をセットで歩き、リスボンの“水の地形”をもう一度たどってみたいと思いました。
旅程
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エドゥアルド VII デ・イングラテーハ公園
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Reservatório da Mãe d'Água das Amoreiras
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Praça Luís de Camões
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サン ペドロ デ アルカンタラ展望台
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