豊島区・椎名町駅の北口を出てすぐの寺、金剛院をお参りしました。駅前の賑わいから一歩入ると、まず目に入るのは鮮やかな朱の山門――通称「赤門」です。境内には弘法大師像が立ち、手前の赤と、奥に見える本堂などの落ち着いた茶のコントラストが印象的でした。茶といっても古色蒼然ではなく、近代的で端正な色合いで、駅前の景色とも不思議となじんでいます。
この赤門には物語があります。江戸時代、天明年間の大火の折に、当時の住職・宥憲和尚が多くの罹災者を寺に収容して救った功績により、10代将軍・徳川家治から山門を朱塗りとする特別の許可が与えられ、安永9年(1780)に現在の赤門が完成しました。赤い門は本来、将軍家ゆかりだけに許された格式の象徴で、地域の人びとはやがてこの寺を親しみを込めて「赤門寺」と呼ぶようになります。平成6年(1994)には豊島区の有形文化財にも指定され、いまも町のランドマークとして参拝者を迎えています。
金剛院は真言宗豊山派の寺で、本山は奈良・長谷寺。本尊は阿弥陀三尊で、御府内八十八ヶ所霊場の第76番札所でもあります。創建は大永2年(1522)、聖弁和尚によるもので、のちに宝永6年(1709)に現在地へ移りました。境内には「長崎不動」の名でも親しまれる祈りの場があり、寺は駅前でカフェを営むなど、時代に合わせて地域と寄り添ってきました。朱の門をくぐると、江戸の面影と現代の暮らしが同居する、この町ならではの時間が流れているように感じます。
赤門をくぐって弘法大師像に手を合わせ、本堂に参ると、小さな移動の合間にも心が澄むようでした。駅前にありながら、歴史の厚みがはっきりと伝わってくる場所です。次に訪れるときは、赤門の細部の彫りや、阿弥陀三尊の来歴にももう少し目を凝らしてみたいと思います。
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