朝から米沢の史跡をたどり、上杉神社や上杉家廟所、林泉寺を見学した流れで、上杉伯爵邸/上杉記念館へ足を運びました。松が岬公園の南側にたたずむこの建物は、かつて「鶴鳴館(かくめいかん)」とも呼ばれた旧上杉伯爵邸で、城下町の散策の締めくくりにふさわしい、落ち着いた気配をまとっています。
林泉寺から向かったため、堀に囲まれた敷地へ南西側の橋から入り、そのまま庭の方へ回り込みました。水面には蓮の葉が浮かび、初夏の気配がすでに庭に満ちていました。
視線を上げると、上杉鷹山の像があり、財政再建や民政で知られる名君の存在が、この場所の空気をさらに引き締めているように感じます。米沢の郷土料理の背景として鷹山公の「かてもの」に触れられるのも、この施設らしいところです。
上杉記念館の歴史を少し知ると、外から眺める時間にも奥行きが出てきます。旧上杉伯爵邸は、明治29年(1896年)に上杉家14代・最後の米沢藩主でもある上杉茂憲の本宅として、米沢城二の丸跡に造営されましたが、1919年(大正8年)の米沢大火で焼失しました。その後、1925年(大正14年)に純日本風の邸宅として再建され、現在に受け継がれています。
再建後の建物は、銅板葺の屋根をいただく端正な和風建築で、設計は建築家・中條精一郎が担当したことも知られています。また庭園は東京の浜離宮庭園を模して造られたとされ、堀と庭と建物が一体になって、城下町の記憶を静かに保っているようでした。こうした価値から、上杉記念館の建物群は国の登録有形文化財にも登録されています。
この日は建物が郷土料理をいただける料理屋として使われている雰囲気が強く、食事を済ませた直後だったこともあって中には入りませんでした。ただ、後で調べると館内見学ができる旨の案内もあり、食事の利用状況によっては見学が難しい場合もあるようなので、あのとき一言確認してみればよかったと少し悔いが残りました。次に訪れるときは、庭を眺めるだけで終わらせず、座敷の空気や建物の細部まで含めて味わってみたいです。
外観と庭の余韻を胸に、私は次の目的地である酒造資料館「東光の酒蔵」へ向かいました。米沢は、武家の歴史と暮らしの文化が歩ける距離に折り重なっていて、同じ一日でも場面が次々に切り替わっていきます。上杉伯爵邸/上杉記念館は、その切り替えの手前で一度足を止め、時間の流れを整えてくれる場所でした。
旅程
東京
↓(新幹線)
米沢駅
↓
(中略)
↓
米沢市上杉博物館
↓(徒歩)
↓(徒歩)
↓
(中略)
林泉寺
↓(徒歩)
餐霞館(さんかかん)遺跡
↓(徒歩)
↓(徒歩)
↓(徒歩)
↓(徒歩)
米沢駅
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