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7月, 2025の投稿を表示しています

国立科学博物館:特別展「氷河期展 〜人類が見た4万年前の世界〜」

3連休の初日、上野の国立科学博物館で開催中の特別展「氷河期展 〜人類が見た4万年前の世界〜」を訪れました。天気にも恵まれ、館内は多くの来場者で賑わっており、入場までに10分ほどの行列ができていました。展示は、かつて地球が氷に包まれていた時代を多角的に紹介しながら、人類と動物たちの生きた世界を再現しています。 最初のエリアでは、氷河期を生きた巨大動物――いわゆる「メガファウナ」たちが出迎えてくれました。マンモスの骨格標本はもちろんのこと、オオツノジカやオーロックス、ケサイといった現在では見ることのできない大型哺乳類たちの姿が、骨格標本や生体復元模型でリアルに再現されていました。その迫力に、かつての地球の厳しさと豊かさを感じさせられます。 次の展示では、ネアンデルタール人とクロマニョン人という、人類の近縁種・祖先たちに焦点が当てられていました。特に、日本初公開となるネアンデルタール人のラ・フェラシー1号や、ラ・シャペル・オー・サンの「老人」といった著名な化石標本に目を奪われました。加えて、クロマニョン人の1号・2号の頭蓋骨が展示されており、旧石器時代の人類の文化的な豊かさを示す証拠――装飾品や骨製の縫い針など――も紹介されていました。実用品だけでなく、美しさを追求する感性がすでに存在していたことに驚かされます。 続いて、日本列島の氷河期に関する展示では、当時の地理や文化に思いを馳せることができました。北海道がサハリンや大陸と陸続きであった「古北海道半島」と呼ばれる時代には、多くの装飾品が作られていたようで、現代のファッション感覚に通じるものを感じました。特に、日本では旧石器時代の装飾品の出土例が少ない中、北海道から見つかった品々は貴重な発見です。また、沖縄で発掘された港川人の全身骨格も展示されており、南北で異なる環境の中、人々がそれぞれの生活を営んでいたことが伝わってきました。 展示の締めくくりは、氷期と間氷期における植生の変化に関するものでした。福井県の水月湖では、年ごとの堆積物――いわゆる「年稿」が連続して保存されており、花粉や胞子といった微細な化石から、当時の植物相を解明することが可能となっています。このように、日本の地層が地球全体の気候変動を知る鍵にもなっていることに、あらためて日本列島の地質学的な価値の高さを実感しました。 特別展を見終えたあと、少し時間があっ...

多摩動物公園:蝶が舞うドームと広がる草原、30年ぶりの動物園で出会う、生きものたちの今

動物園を訪れるのは、子どものころ以来、本当に久しぶりの体験でした。学芸員の勉強を進める中で、動物園も博物館法の枠組みの中に含まれることを知り、展示や解説の工夫に着目したいという思いから、多摩動物公園を訪れました。 正門から入ると、まずその広大な敷地と展示のスケールに圧倒されました。パンフレットを手に取ると、ライオンやゾウ、コアラなど、見たい動物たちの飼育エリアが大きく離れて配置されていることに気づき、子どもの頃に思い描いていた「動物がぎゅっと詰まった動物園」とはまったく異なる空間であることを実感しました。 最初に訪れたのは、未来的なドームが特徴的な昆虫生態園です。実は昆虫はあまり得意ではありませんが、思い切って足を踏み入れてみました。入り口付近にはごきぶりなど苦手な昆虫もいましたが、奥に進むと蝶の生態展示や、実際に蝶が舞うドーム空間が広がっていました。温度や湿度、光まで細かくコントロールされているようで、まるで映画のワンシーンのように美しく蝶が飛び交います。昆虫が苦手な方でも、ここなら安心して楽しめる工夫が感じられました。 続いて、アフリカ園へ向かいました。ライオンの飼育スペースは広大で、専用バスで周遊することもできるサファリパークのような展示方法が採用されています。今回はバスには乗らず外から見学しましたが、ライオンたちがのびのびと過ごす様子を遠くから観察できました。アフリカゾウやキリン、チンパンジーなどもそれぞれゆとりある環境で飼育されており、動物本来の行動が引き出せるよう工夫されていると感じました。 オーストラリア園では、コアラやカンガルー、インドサイなどをじっくりと見学。普段は混み合いがちなコアラ館もこの日は空いていて、ゆっくりと写真を撮ることができました。ガラス越しに間近で観察できる展示で、コアラの穏やかな動きに癒されました。 アジア園ではユキヒョウやレッサーパンダ、そしてオオカミなどが展示されていました。特にオオカミ舎は、建物の中からガラス越しに様々な角度で見学できるよう設計されていましたが、残念ながらこの日は姿を見ることができませんでした。オオカミはとても慎重な性格だそうで、姿を現すタイミングにも動物ごとの個性が感じられます。 どのエリアでも共通していたのは、動物たちがストレスを感じにくいよう広い空間が用意されていること、そして来園者が学びやすいよう生態...

大森貝塚遺跡庭園/大森貝墟の碑:都市の片隅に残る、縄文の時間

品川歴史館を見学した後、 大森貝塚遺跡庭園を訪れました。品川歴史館で古代の遺跡や品川の歴史に触れた後だったので、実際にその歴史の現場を歩けることに、少しワクワクしながら庭園の入口に到着しました。 入口や広場は、どこか土器を思わせる丸みや曲線を活かした造りになっていて、過去と現代をつなぐ不思議な雰囲気が漂っていました。 園内には、アメリカ人動物学者エドワード・S・モース博士の像が建てられています。モース博士は1877年(明治10年)、この地で日本初の本格的な考古学的発掘調査を行った人物であり、大森貝塚を世界的に有名にした立役者です。その像の前に立つと、100年以上前の発見の感動が少しだけ伝わってくる気がしました。 庭園の奥へ進むと、貝塚の断面を見ることができます。黒ずんだ貝殻や土層が幾重にも重なり、縄文時代の人々の暮らしや日常の痕跡が感じられます。解説パネルも設置されており、当時の食生活や文化に思いを馳せることができました。 その後、庭園から徒歩ですぐの場所にある「大森貝墟の碑」も訪れました。NTTのビルの裏手という少し分かりにくい場所ですが、道や階段がきちんと整備されており、迷わずたどり着くことができました。入口には「9時から17時までは通行可能」とあり、訪問時間に少し気を付ける必要があります。 また、ビルの前には時間外の訪問者向けなのか、碑の2分の1スケールのレプリカが設置されていました。手軽に碑の雰囲気を感じられる工夫がされているのも、歴史を大切にするこの地域らしい配慮だと感じました。 大森貝塚は、ただの「遺跡」ではなく、日本の考古学や縄文文化の出発点の一つともいえる場所です。現地を歩き、モース博士の功績や、土の中に眠る遠い昔の人々の暮らしを身近に感じられるひとときとなりました。 旅程 大森駅 ↓(徒歩) 品川区立品川歴史館 ↓(徒歩) 大森貝塚遺跡庭園 ↓(徒歩) 大森貝墟の碑 ↓(徒歩) 大森駅 関連イベント 周辺のスポット 品川区立品川歴史館 ニコンミュージアム しながわ水族館 地域の名物 関連スポット リンク 大森貝塚|品川区立 品川歴史館 大森貝塚遺跡庭園 | しながわ観光協会 大森貝塚遺跡庭園 | agataJapan.tokyo

品川区立品川歴史館:遺跡・台場・工場、遺跡と絵図でたどる、品川のものがたり

 品川区は、東京湾に面した歴史豊かな地域です。今回、品川歴史館を訪れて、その歩みを時代ごとにたどることができました。 館内に入ると、まず古代の品川を物語る石器や土器が目に入りました。大森貝塚や池田山北遺跡といった、区内の遺跡から発見された実物の展示は、遠い昔にこの地で人々がどのような暮らしを営んでいたのか、想像をかき立ててくれます。 時代が進むと、大和朝廷の時代、東海道に設けられた大井駅が登場します。延喜式(えんぎしき)に記された大井駅の説明や関連資料を通じて、古くから交通や物流の要衝だった品川の一面を知ることができました。 鎌倉時代には、この地を治めた大井氏や品川氏の資料が展示されていました。戦国時代に創建された妙国寺の周辺の絵図もあり、江戸以前の品川がどのような地域だったのか、具体的に思い描くことができました。 江戸時代に入ると、幕府によって設けられた台場に関する資料が印象的でした。海防のために大砲が設置された御台場の絵図は、江戸が国の中心となった時代の緊張感や技術力を感じさせます。 明治時代になると、鉄道が開通し品川停車場が登場します。風景図画や工場で生産されたガラスやレンガなどの資料から、品川が近代都市として発展していく様子が伝わってきます。 関東大震災や戦後復興の展示コーナーでは、災害からの立ち直りと街の再生の記録を見ることができました。特別展では「昭和100年 しながわめぐり」と題し、品川のもう一つの顔である海苔漁の歴史が紹介されていました。かつて海苔漁が盛んだった品川も、工場の増加とともに水質が悪化し、漁業権が放棄されていく過程が、資料や写真によって丁寧に説明されていました。 時代ごとの展示を見ていくうちに、品川が湾岸の自然に恵まれた土地から、交通・産業の要所、そして近代都市へと、幾度も姿を変えてきたことがよく分かります。展示資料の一つ一つに、この街を生きた人びとの営みと、時代の大きなうねりが映し出されていました。歴史館の見学を通して、品川の今をより深く知ることができる貴重な時間となりました。 旅程 大森駅 ↓(徒歩) 品川区立品川歴史館 ↓(徒歩) 大森貝塚遺跡庭園 ↓(徒歩) 大森貝墟の碑 ↓(徒歩) 大森駅 関連イベント 周辺のスポット 大森貝塚遺跡庭園 大森貝墟の碑 ニコンミュージアム しながわ水族館 地域の名物 関連スポット リンク ...