日暮里駅で電車を降り、谷中霊園をはじめとする寺町の空気を味わいながら静かな路地を歩きました。石垣や黒塀が続く道は、江戸の頃から寺院が集まった谷中らしい佇まいで、季節の移ろいがそのまま景色にしみこんでいるように感じます。霊園の緑を抜けて最後に着いたのが玉林寺(ぎょくりんじ)でした。
大きな伽藍があるわけではありませんが、門前から境内までよく手入れが行き届き、落ち着いた雰囲気が心地よいお寺です。谷中の寺院は、江戸の都市拡張とともに寺町として整えられてきた歴史があり、明治以降は霊園の誕生もあって、都市の暮らしと祈りが交差する場所として今日まで受け継がれてきました。玉林寺にも著名人の墓所が伝わり、千代の富士や秦檍丸の名が示すように、近現代の記憶が静かに息づいています。
帰り道は根津駅へ向かって坂を下りました。角を曲がると、ちょうど根津神社の祭礼のみこしの列とすれ違いました。掛け声と太鼓の音が路地に響き、静かな寺町の空気に祭の熱気が重なります。谷中から根津へ――寺院と霊園の静けさ、地域の祭礼のにぎわい、そのどちらもがこの町の歴史を支えているのだと実感しました。短い滞在でしたが、歩けば歩くほど層を重ねる時間に触れ、また季節を変えて訪れたいと思いました。
旅程
日暮里駅
↓(徒歩)
谷中霊園
↓(徒歩)
↓(徒歩)
↓(徒歩)
根津駅
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