最近は昼休みの散歩を習慣にしています。サンドイッチを片手に新宿の町を歩いていると、西應寺に行き当たりました。高層ビルの谷間を抜け、ふと路地に入ると、車の音が遠のき、砂利の感触と木々の匂いが立ちのぼります。新宿区といえば現代的な景観が真っ先に浮かびますが、実は寺社が点在し、由緒ある墓所や文化財が静かに息づいているのだと改めて感じました。
境内には榊原鍵吉の墓の案内があり、新宿区指定文化財であることが記されていました。幕末から明治にかけて名を馳せた剣客として広く知られる人物で、動乱の時代を生きた個人の物語が、この都会の片隅に確かに刻まれているのだと思うと、通り過ぎてきたオフィス街の喧騒が急に遠いものに思えます。また、正徳2年(1712年)鋳造の梵鐘も同じく区の文化財として保護されており、江戸の響きを伝える重厚な存在感がありました。幾世代を超えて受け継がれてきた金属の艶と刻まれた文字を前にすると、時間の厚みを手で触れられるような気持ちになります。
西應寺の静けさは、短い昼休みの中で心の速度を落としてくれます。歴史の断片に触れると、日々の仕事や歩数の記録といった目の前のタスクが、より大きな流れの中に位置づけられていくようです。新宿にはビル群と同じくらい、こうした小さな歴史の居場所があるのだと知ることができました。次の昼休みも、地図アプリでは見落としてしまう細い参道を探しながら、またどこかの寺の門をくぐってみたいと思います。
旅程
四ツ谷駅
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四ツ谷駅
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