桜の季節に諏訪を巡っていたこの日、諏訪大社の四社をまわり終えた帰り道、タクシーの運転手さんに「駅の近くでどこか見どころはありますか」と尋ねると、「高島城(たかしまじょう)がいいですよ」と勧められました。事前の候補には入れていなかった場所でしたが、結果的にこの寄り道が旅の印象を鮮やかに塗り替えてくれました。
高島公園には南側から入り、まずは園内の諏訪護国神社に参拝しました。
ちょうど桜が満開で、淡い花びらが風に舞い、堀の水面に映る姿まで薄桃色に染めていました。参道を抜けて公園をゆっくり散策すると、石垣と水、そして花がつくる重なりが美しく、城下町の春を凝縮したような光景にしばし足が止まります。
北側の天守へ向かい、館内の展示を見ながら階段を上がって展望階に出ると、足もとに広がる公園一帯が柔らかな桜色に包まれていました。その向こうには諏訪市街が開け、さらに視線を上げると山並みがまだ残雪を抱えています。湖畔の町ならではの澄んだ空気が頬をなで、朝から歩き続けた体に心地よいご褒美となりました。
高島城は、かつて諏訪湖に迫り出すように築かれたことから「浮城(うきしろ)」とも呼ばれた名城です。近世に築かれて以降、江戸時代には諏訪氏の居城として城下町の要を担いました。明治の廃城で多くの建物は失われましたが、現在の天守は復興されたもので、内部は地域の歴史や城の変遷を知ることができる資料館になっています。堀と石垣が今に伝える佇まいは、湖とともに生きた城の性格を感じさせ、ただ眺めるだけでも当時の景観を想像させてくれます。
当初は諏訪大社だけを目的にしていましたが、最後に高島城を訪ねたことで、宗教と武家、祈りと治政、そして自然と都市が折り重なる諏訪の歴史が、一本の糸でつながったように思いました。予定外の寄り道が旅のハイライトになることがありますが、この日の満開の桜と水面に映る天守は、まさにそんな“偶然のご褒美”でした。次は新緑や紅葉、雪景色の季節にも訪れ、湖と城が見せる別の表情を味わってみたいです。
旅程
(略)
↓(徒歩)
諏訪市湖畔公園
↓(徒歩)
↓(徒歩)
(略)
↓(タクシー)
鷲峰山法華寺
↓(徒歩)
↓(タクシー)
↓(徒歩)
↓(徒歩)
上諏訪駅
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