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フラメンコ/Palau del Flamenc:カスタネットが鳴り響く街の片隅で

バルセロナ滞在の夜、夕食を兼ねてフラメンコ劇場「Palau del Flamenc」を訪れました。昼間はガウディ建築や旧市街を歩き回り、観光の余韻を感じながら迎えた夕方、劇場の入り口には、スペインらしい情熱的な雰囲気が漂っていました。 開演前には、フラメンコの簡単なレッスンがありました。講師がステップを踏みながら手拍子のリズムを教えてくれるのですが、大人たちは少し照れくさそうに見ているだけで、なかなか参加しようとしません。僕もその一人でした。しかし、他の家族連れの子どもたちは、恥ずかしさなど気にせず楽しそうに体を動かしていて、その姿がとても微笑ましく、スペインの陽気さを感じる瞬間でした。 レッスンが終わると、劇場内へと案内されました。テーブルには食事が並び、観客はワインや料理を楽しみながら舞台を待ちます。やがて、ギターの音色が響き、舞台上にダンサーが登場しました。床を強く打ち鳴らす足音、指先まで神経が通った手の動き、そして胸の奥から響くような歌声。すべてが一体となって、観る者の心を揺さぶります。 フラメンコは、もともとアンダルシア地方で生まれた芸術で、ロマ(ジプシー)文化やアラブ、ユダヤ、スペインの民謡など、さまざまな文化の交わりから生まれたといわれています。悲しみや誇り、情熱といった感情を音楽と踊りで表現するこの芸術は、スペインの魂そのもののように感じられました。 バルセロナの夜に響くカスタネットの音と、舞台を照らす橙色の光。観光地のにぎわいとはまた違う、スペインの「心」に触れる時間でした。観光の一日を締めくくるには、これ以上ないほど印象的な夜でした。 旅程 (略) ↓(徒歩) カサ・ビセンス ↓(徒歩) グエル公園 ↓(徒歩) サンタ・エウラリア大聖堂 ↓(徒歩) Palau del Flamenc(フラメンコ) ↓(徒歩) ホテル 周辺のスポット カサ・ミラ カサ・バトリョ カサ・アマトリェール 地域の名物 ガスパッチョ パエーリャ シェリー酒 リンク Palacio del Flamenco Flamenco Shows Experience | Flamenco Palau Dalmases | Barcelona

サンタ・エウラリア大聖堂:ゴシックの玄関先で息を整え、情熱の舞台へ向かう夕方

バルセロナを歩いていた本日、体調は万全ではありませんでした。 市場で果物をつまみ、街角に現れるガウディの建物を眺めながら、ゆっくりとした足取りでゴシック地区へ向かいました。 サンタ・エウラリア大聖堂の前に着くと、広場は観光客でにぎわっていましたが、正面の影がちょうど良い休憩所となり、私は階段に腰掛けて外観の装飾をしばらく見上げました。尖塔は空へ細く伸び、正面ポータルには繊細なレースのような彫刻が重なり合い、バラ窓の周りには聖人たちが列をなしていました。体力が落ちているときほど、静かに眺めるだけの時間が贅沢に感じられます。 この大聖堂は「聖十字架と聖エウラリア」に捧げられた教会で、起源は中世にさかのぼります。現在のゴシック様式の骨格は13~15世紀に整えられ、都市の繁栄とともに増改築が重ねられてきました。守護聖人エウラリアは若くして殉教したと伝えられ、内部の地下には彼女にゆかりの場所があり、回廊では彼女の年齢を象徴する白いガチョウが世話されていることで知られています。外観は中世の意匠を尊重しながら後世に整えられた部分もあり、長い時間を積み重ねた都市の記憶そのもののように感じられます。 残念ながらこの日は体調がすぐれず、内部拝観は見送りました。当時は「また今度でいいか」と思ってしまいましたが、今振り返るとやはり勿体なかったです。石の肌理や彫像の表情、ゴシックの陰影は、扉の向こうでどれほど豊かな世界を見せてくれたのだろう――そう想像しながら、私は広場の風をしばらく浴びていました。ひと息ついたあと、予約していたフラメンコの劇場へ向かいました。あの夜の情熱的なリズムと、昼間の静かな聖堂前の時間は、同じ街の振り幅として今も記憶に残っています。次にバルセロナを訪れるときは、必ず扉をくぐり、聖人の物語と石造りの時の流れに、正面から向き合いたいと思います。 旅程 (略) ↓(徒歩) カサ・ビセンス ↓(徒歩) グエル公園 ↓(徒歩) サンタ・エウラリア大聖堂 ↓(徒歩) Palau del Flamenc(フラメンコ) ↓(徒歩) ホテル 周辺のスポット バルセロナ市歴史博物館 サンタ・マリア・ダル・ピ教会 地域の名物 ガスパッチョ パエーリャ シェリー酒 リンク バルセロナのカテドラル、サンタエウラリア大聖堂、徹底解説 | 2025年 バルセロナ観光 フリープランなら【カタルーニャ...

グエル公園:ガウディの夢が息づく未完の理想郷、丘の上の芸術空間

スペインのバルセロナに観光に来ました。ガウディの作品群を中心に廻り、グエル公園に来ました。 バルセロナの街の北側に広がる小高い丘の上に、グエル公園という不思議な魅力を持つ場所があります。ここは、スペインの天才建築家アントニ・ガウディが手がけた独特な芸術空間で、世界中から訪れる観光客の目を楽しませています。自然と建築が見事に調和し、まるでおとぎ話の中に迷い込んだような感覚を味わえる場所です。 この公園はもともと、実業家エウセビ・グエルがガウディに依頼して開発された住宅地として計画されました。しかし、商業的には成功せず、わずか数軒の住宅が建てられただけで計画は中断されます。その後、未完成のまま残された敷地が市によって買い取られ、公園として整備されたのです。 公園内にはガウディらしい有機的な曲線やモザイクタイルがふんだんに使われています。特に有名なのが、カラフルな破砕タイルで飾られたトカゲの噴水「ドラゴン」や、蛇のようにうねる長いベンチが特徴的な「ギリシャ劇場(現在の中央広場)」です。これらの造形は、機能性だけでなく、視覚的な美しさと自然との調和を追求したもので、ガウディの自然への深い敬意が表れています。 また、公園内にはガウディが実際に住んでいた家も残っており、現在はガウディ博物館として公開されています。家具や日用品もガウディのデザインによるもので、彼の生活や創作の一端を垣間見ることができます。 グエル公園は、1984年にユネスコ世界遺産に登録され、その芸術的・歴史的価値が世界的に認められました。訪れるたびに新しい発見があり、ガウディの世界観にじっくりと浸ることができます。静かに広がる松林や小道を歩きながら、視線の先に現れる不思議な建築物を眺めていると、まるで夢の中にいるかのような気持ちになることでしょう。 バルセロナを訪れる際には、サグラダ・ファミリアと並んで、このグエル公園もぜひ立ち寄りたい名所のひとつです。喧騒を離れ、芸術と自然の融合を肌で感じながら、ガウディが残した幻想的な世界に身を委ねてみてはいかがでしょうか。 旅程 (略) ↓(徒歩) カサ・ビセンス ↓(徒歩) グエル公園 ↓(徒歩) サンタ・エウラリア大聖堂 ↓(徒歩) Palau del Flamenc(フラメンコ) ↓(徒歩) ホテル 周辺のスポット カサ・ビセンス サグラダ・ファミリア 地域の名物 ...

バルセロナ凱旋門:旅の疲れを癒やす、バルセロナのあたたかな陽射し

バルセロナの初日、11月とは思えないほど暖かな日差しのもと、私は観光の道を歩き始めました。サグラダ・ファミリアの壮麗な姿に圧倒され、建築と信仰が織りなす空気を味わった後、次に目指したのはバルセロナ凱旋門です。 バルセロナ凱旋門は、1888年のバルセロナ万国博覧会の際に建設されました。多くの都市に凱旋門がありますが、バルセロナのものは赤レンガ造りで、やわらかい曲線と精緻な装飾が特徴的です。威厳を持ちながらも、どこか親しみやすさを感じさせる佇まいが魅力だと、訪れるたびに感じます。周囲には広い歩道と並木道が続き、市民や観光客が思い思いに過ごしていました。 しかし、その日の私は少し体調が優れませんでした。もしかしたら旅の疲れか、風邪を引いたのかもしれません。凱旋門の前に広がるリュイス・コンパニス通りにはいくつかベンチが設けられており、私はその一つに腰を下ろしました。目の前にそびえる凱旋門をゆっくり眺めながら、時折そよぐ風に身をまかせていると、心も身体も少しずつほどけていくような感覚に包まれました。温かな陽気に誘われて、ベンチの上でしばらくうとうとしてしまったのも、旅先ならではの贅沢な時間だったと思います。 しばらく休息をとったことで体調も戻り、再び歩き出す元気が湧いてきました。次に向かったのはサンタ・カテリナ市場。カラフルな波打つ屋根が印象的なこの市場では、地元の人々が活気に満ちた声を響かせ、新鮮な食材やバルの香りが漂っていました。 バルセロナ凱旋門は、歴史的な記念碑であると同時に、市民の日常に寄り添う憩いの場所でもあります。観光地としての賑わいと、静かな時間が同居するこの場所で過ごした午後は、私にとってバルセロナの街の温かさや包容力を実感させてくれる、忘れがたい思い出となりました。 旅程 (略) ↓(徒歩) カサ・ビセンス ↓(徒歩) グエル公園 ↓(徒歩) サンタ・エウラリア大聖堂 ↓(徒歩) Palau del Flamenc(フラメンコ) ↓(徒歩) ホテル 地域の名物 ガスパッチョ パエーリャ シェリー酒 リンク Arc de Triomf, Barcelona:街の象徴であるランドマークと豊かな歴史に浸る 凱旋門のBarcelona | spain.info 凱旋門を訪れる:バルセロナの象徴的モニュメントとランドマークガイド - サグラダ・ファミリア・バルセロナ

August Bournonvilles Passage:石の神々が見下ろす通り

コペンハーゲンの街を歩いていると、ふとした通りにも歴史と芸術の香りが漂っていることに気づきます。旅の3日目の夕方、ローゼンボー城などを巡ったあと、偶然立ち寄ったのが「August Bournonvilles Passage」でした。劇場街の一角にあるこの通りは、デンマークの誇るバレエ振付家アウグスト・ブルノンヴィル(August Bournonville)の名を冠しています。19世紀のコペンハーゲンで活躍し、デンマーク王立バレエ団の基礎を築いた人物で、その名が街の一部として残っていることに、文化を大切にする国らしさを感じました。 通りの入り口では、道を跨ぐように建てられた建物が印象的で、まるで空中回廊のように左右をつないでいました。その壁面には、ギリシャ神話の神々を思わせる3体の像が並び、静かに街を見守っていました。遠くから見ただけでしたが、夕暮れの光に照らされたその彫刻の陰影は美しく、建物全体がひとつの舞台装置のように見えました。 この街では、王宮や博物館のような大きな建築物だけでなく、こうした小さな通りや装飾にも芸術が息づいています。ブルノンヴィルが愛した舞台の世界が、今も街角に残り、人々の暮らしの中に溶け込んでいるのだと思うと、何気ない散歩が少し特別なものに感じられました。 旅程 (略) ↓(徒歩) 人魚姫 ↓(徒歩) カステレット要塞 ↓(徒歩) デザインミュージアム・デンマーク ↓(徒歩) (略) ↓(徒歩) アマリエンボー ↓(徒歩) ローゼンボー城 ↓(徒歩) カリタス噴水 ↓(徒歩) (略) ↓(徒歩) Garden of the Royal Library ↓(徒歩) August Bournonvilles Passage ↓(徒歩) Memorial Anchor ↓(徒歩) ラウンド タワー ↓(徒歩) ホテル 周辺のスポット Memorial Anchor リンク August Bournonvilles Passage | What to Know Before You Go

ローゼンボー城:王の庭で味わう、デンマークの日常と歴史の交差点

コペンハーゲン2日目、デンマークらしい澄んだ朝の空気に包まれながら、まずは有名な人魚姫の像を訪れ、その後、王の庭を抜けてローゼンボー城へ向かいました。 王の庭、正式には「コングス・ハヴェ」と呼ばれる広々とした庭園は、市民や観光客の憩いの場として親しまれています。色鮮やかな花壇や歴史を感じさせる彫像が点在し、緑に包まれた小径を歩くだけでも、王家の都らしい優雅な雰囲気を味わうことができます。 ローゼンボー城は、デンマーク・ルネサンス様式の傑作として名高いお城です。クリスチャン4世によって17世紀初頭に建てられ、もともとは王の夏の離宮として使われていました。赤レンガと緑青色の屋根が印象的な外観は、童話の世界に迷い込んだかのような幻想的な美しさがあります。 城内に入ると、王族がかつて暮らした華やかな部屋や、豪奢な王冠、宝飾品が展示されており、デンマーク王家の歴史を肌で感じることができます。特に地下の宝物庫では、デンマーク王冠や王笏など、王権の象徴となる貴重な品々が展示されており、その豪華さに目を奪われました。 城の見学を終えて外に出ると、ちょうど衛兵たちが隊列を組み、楽団の演奏とともに行進しているところに出会いました。整然と揃った青い制服、軽やかに響くブラスバンドの音色が、王家の伝統と格式を感じさせます。城の隣には兵舎(バラック)もあり、そこから兵士たちが出てくる様子を見られたのも、また印象深いひとときでした。 コペンハーゲンの歴史と日常が交錯するローゼンボー城で、王家の栄光に思いを馳せながら、今も人々に大切にされているデンマークの伝統を間近に感じることができた一日でした。 旅程 (略) ↓(徒歩) 人魚姫 ↓(徒歩) カステレット要塞 ↓(徒歩) デザインミュージアム・デンマーク ↓(徒歩) (略) ↓(徒歩) アマリエンボー ↓(徒歩) ローゼンボー城 ↓(徒歩) カリタス噴水 ↓(徒歩) (略) ↓(徒歩) Garden of the Royal Library ↓(徒歩) August Bournonvilles Passage ↓(徒歩) Memorial Anchor ↓(徒歩) ラウンド タワー ↓(徒歩) ホテル リンク Rosenborg Castle | The Royal Danish Collection

カステレット要塞:赤い兵舎と風車、星形の土塁を歩く

コペンハーゲンの港の風に背中を押されるように歩いて行くと、芝生がなだらかに盛り上がる丘のむこうに赤い兵舎が並ぶ一角に出ました。 地図では見事な五角形に切り取られた場所なのに、地上ではその幾何学はふわりと溶け、静かな散歩道と水堀、整えられた芝生の広がりとして体に触れてきます。 ここが17世紀に築かれた星形要塞カステレットだと意識させるのは、土塁の斜面と角(バスティオン)の“張り出し”が作る独特の地形でした。要塞は五つのバスティオンで五角形を成し、角と角が互いを援護射撃できるように設計されています。死角を消し、横から掃射できる――火砲の時代に最適化された「トレース・イタリエンヌ」と呼ばれる合理の結晶で、地図や空撮で見るとその意図がいっそう鮮やかに見えてきます。 土塁の上に上がると風車が姿を見せました。かつて包囲戦に備えて粉を挽くため、この要塞の土塁には風車が設けられましたが、いま残るのはこの一基だけだそうです。軍の給食用に粉を供給したという逸話も残り、軍事施設でありながら生活の匂いも感じられます。 門をくぐると左右に赤い列状の兵舎が続き、奥に司令官邸や教会、火薬庫などの建物が点在していました。17世紀に王クリスチャン4世がこの地に前哨を置き、スウェーデン軍の包囲(1658–1660)を経て、オランダ人技師ヘンリク・ルーセの手で1660年代に本格的な城塞へと整えられた経緯を思うと、端正な景観の奥にある層の厚さにしばし足が止まります。のちには1807年のコペンハーゲン砲撃でも防衛線の一部を担い、第二次世界大戦初日にはドイツ軍に占領されました。歴史の節目ごとに、この静けさは試されてきたのだと実感します。 門の近くでは銃を携えた兵士の姿も見かけました。観光用の演出か本物か一瞬迷いましたが、ここは今も国防省所管の現役の軍用地で、昼には衛兵交代も行われるとのこと。とはいえ場内は市民に開かれた公園として守られ、芝生の斜面に腰をおろす家族連れや、堀沿いを走るランナーがそれぞれの時間を過ごしていました。物々しさよりも、むしろ優雅で穏やかな空気が支配しているのが印象的でした。 地図の五角形が地上では感じ取りにくいのは、まさにこの要塞の思想ゆえだと気づきます。高くそびえる石壁ではなく、低く厚い土塁と張り出した角が折り重なる構造は、外からの砲撃に強く、互いに側面射撃で援護できる――そういう“機...