香川・徳島観光の2日目は、少しだけ冒険心をくすぐられるような一日になりました。徳島ローカルの小さなバスツアーに参加し、大歩危小歩危のあたりを巡るコースで、その途中の立ち寄り先のひとつが、祖谷渓の小便小僧でした。
バスツアーと聞くと、大きな観光バスを思い浮かべますが、この日は小さなバンタイプの車でした。最初は「参加者が少ないのかな」と不思議に思っていましたが、小便小僧に近づくにつれて、その理由がよく分かってきます。祖谷街道はカーブの多い山道で、その先にある小便小僧付近の道は、車同士がすれ違うのもやっとというような狭さでした。大きな観光バスではとても入っていけない道で、むしろこの車のサイズだからこそたどり着ける場所だったのだと実感しました。
祖谷渓は、V字型に深く切れ込んだ渓谷で、谷底にはエメラルドグリーンの祖谷川が流れています。古くから平家の落人伝説の舞台として知られ、日本三大秘境のひとつにも数えられている場所です。渓谷の形から「ひの字渓谷」とも呼ばれ、秋には谷底から山の上まで一面が紅葉に染まり、季節ごとに違った表情を見せてくれるそうです。
そんな秘境の渓谷の中でも、とりわけ人の目を引くのが、断崖の上に立つ小便小僧です。祖谷街道一の難所といわれた七曲のあたりに「小便岩」と呼ばれる岩が突き出しており、その先端に小さな裸の少年の像が立っています。実際に目の前にすると、像そのものは思っていたよりも小さく感じましたが、背後に広がる谷のスケールがあまりにも大きいため、かえってその対比が印象に残りました。足元の遙か下をのぞき込むと、谷底まではおよそ200メートルあるといわれ、思わず足がすくみます。
この小便小僧には、少しユニークな由来があります。昔、この祖谷街道を行き来していた地元の子どもたちや旅人、工事の作業員たちが、この断崖の上で度胸試しをしていたという話が残っており、そこから小便をしたという逸話にちなんで像が建てられたとされています。現在の像は、徳島県出身の彫刻家・河崎良行によって1968年に制作されたもので、日本人の少年らしい姿にかたどられています。
観光客用の展望スペースからは、手すり越しに小僧の後ろ姿と、その向こうに広がる祖谷渓の深い谷を眺めることができます。周囲はのどかな山の景色なのに、断崖に立つ小さな像だけが、どこかシュールで少し可笑しくもありました。とはいえ、ここに立っていた昔の人たちの度胸を思うと、笑うより先に「よくこんな場所に立てたな」と感心してしまいます。
小さなバンでくねくねと山道を登り、ようやくたどり着く祖谷渓の小便小僧は、アクセスの苦労も含めて記憶に残るスポットでした。像そのものよりも、そこに至るまでの狭い道や、崖の上から見下ろす渓谷の深さ、そして秘境らしい静けさが印象に残っています。四国の山の奥に、こんな遊び心のある景観がひっそりと隠れているのだと思うと、徳島の旅が一層楽しく感じられる一日でした。
旅程
阿波池田駅
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阿波池田バスターミナル
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郷土料理の昼食
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祖谷のかずら橋
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阿波池田駅
周辺のスポット
- 祖谷のかずら橋
- 平家屋敷
- 道の駅大歩危 / 妖怪屋敷
地域の名物
- 祖谷そば
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