大國魂神社から旧甲州街道を西へ向かうと武蔵府中熊野神社古墳がある熊野神社と府中熊野神社古墳展示館が見えてきます。
武蔵府中熊野神社古墳は、東京都府中市にある珍しい形式の古墳です。全国的にも6例しか確認されていない「上円下方墳」という形状を持ち、その特異な構造から考古学的にも大変貴重な遺跡とされています。
この古墳の築造時期は7世紀中頃から後半と考えられています。飛鳥時代に入るこの時期は、古墳文化の終焉が近づき、中央政権との関係が一層強まる中で、新しい埋葬様式が見られるようになりました。武蔵府中熊野神社古墳もまた、そうした時代の変化を象徴する存在といえるでしょう。
古墳は三段に分かれており、第一段の基壇は一辺32メートル、高さ0.5メートルの方形をしています。その上に築かれた第二段は一辺23メートル、高さ2.2メートル、さらに第三段となる上円部は直径16メートル、高さ2.1メートルの円形を成しています。この三層構造が、一般的な前方後円墳や円墳とは異なる独特の形を作り出しており、発掘調査の際にも注目されました。
武蔵府中熊野神社古墳は明治時代にはすでに開口していたため、副葬品はわずかしか出土しませんでした。その中でも、鉄地銀象嵌鞘尻金具(てつじ ぎんぞうがん さやじり かなぐ)は、当時は先進の技術で作られた、鉄製の地金(じがね、じきん)に銀で模様がつけられた(銀象嵌)、刀の鞘(さや)の先端(鞘尻)につける金具です。この模様は七つの円で構成される「七曜文(しちようもん)」で、同じ時代に作られた国産初の貨幣の「富本銭(ふほんせん)」に見られるだけの、国内外では他に例のないものです。
この古墳は、熊野神社の境内にあるため、現在も良好な状態で保存されています。訪れると、その墳丘の姿を間近に見ることができ、飛鳥時代の府中の姿に思いを馳せることができます。
府中熊野神社古墳展示館
旧甲州街道から来た時に最初に見えるのは古墳ではなく、街道に面している展示館が見つかります。
この展示館には、武蔵府中熊野神社古墳の説明や使用されていた石材が展示されています。また、石室が復原されており、中に入ることができます。
熊野神社
武蔵府中の熊野神社は、もともと府中内の別の場所にあったものであり、神社と古墳は直接の関係は無いようです。
本殿は虹梁絵様(こうりょうえよう)や彫刻などの構成が簡素であることから、18世紀前半の建築と考えられています。屋根の杮葺(こけらぶき)などが造営当時の状態をとどめており、江戸時代中期の府中周辺の社殿の形態が両粉状態で保存されています。拝殿は、室内の長押(なげし)上に掛けられた木材などから19世紀前半の建築と考えられています。
近くには武蔵国府跡や府中市郷土の森博物館もあり、武蔵国の歴史を学ぶには最適な場所といえるでしょう。
武蔵府中熊野神社古墳は、府中の歴史を知る上で欠かせない遺跡の一つです。その形状の珍しさだけでなく、発掘された遺物や歴史的背景を知ることで、より深い理解が得られるでしょう。府中を訪れた際には、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
旅程
登戸駅
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登戸駅
↓(JR南武線)
府中本町駅
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府中市立ふるさと府中歴史館
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西府駅
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