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5月, 2009の投稿を表示しています

三人兄弟(タリン):三つのはずが四つ?タリンの不思議な家並み散歩

タリン旧市街を歩いているとき、ふと路地の先に、肩を寄せ合うように並んだ家々が見えてきました。タリン観光2日目です。石畳のゆるやかな坂道に、三角屋根の家がきれいに並んでいて、「あ、あれが三人兄弟だな」とすぐに分かりました。 タリンといえば、まず有名なのは「三人姉妹」ですが、実は旧市街には「三人兄弟」と呼ばれる家並みもあります。どちらも中世の商人住宅で、細長い敷地に三角屋根を通り側に向けて建てた、ハンザ都市らしいゴシック様式の家です。1階は吹き抜けのホール兼作業場、上の階は穀物や商品を貯蔵する倉庫という造りで、かつての商人たちの暮らしぶりがそのまま立体的に残っています。 タリン旧市街そのものが「中世の町並みがよく残る都市」として世界遺産に登録されていますが、その雰囲気を象徴する一角と言ってよさそうです。 建物の前に立ってじっくり眺めてみると、右から太くて背の高い白い家、少し細くて低い白い家、さらに細くて低い薄黄色の家、そして最後に、薄黄色の家より太いけれど背は低い黄色の家が続いていました。「あれっ、四つあるな……?」と首をかしげながら、しばらく立ち尽くしてしまいました。どう見ても四軒並んでいるのに、名前は「三人兄弟」。おそらく、真ん中の二軒が本来の「兄弟」で、端のどちらかは、たまたま似た姿でくっついて並んでいる“ご近所さん”なのでしょう。そんなことを考えながら眺めていると、どの家にも性格があるように見えてきて、兄弟たちの性格まで想像したくなります。 ここでふと、日本語の名前のことも気になりました。タリンやリガの建物は、日本語だと「三人姉妹」「三人兄弟」と紹介されることが多いですが、日本語の感覚だと「三姉妹」「三兄弟」と言った方が、すっきりした響きがあります。本来、エストニア語やラトビア語では「三人の兄弟」という素朴な表現で、建物に人間味を持たせるような愛称として使われているはずです。それを直訳しようとして、「三兄弟」だと少し意味が変わる気がして、「人」を足してしまったのかもしれません。観光案内のどこかで見かけた「三人兄弟」という表記を、そのまま自分のメモにも書き写してしまったのだろうなと、今になって少し照れくさくなります。 とはいえ、「三人」でも「三」でも、兄弟たちが並ぶ姿の親しみやすさは変わりません。白・黄・緑と色の違う家が肩を寄せ合い、通りの向こうからやって来た旅人...

聖オレフ教会:タリンの空に刺さる一本の尖塔

タリンの旧市街を歩いていると、屋根の海の向こうに一本の尖塔がすっと立ち上がっていました。遠くからでもよく目に入るその塔に導かれるように近づくと、そこが聖オレフ教会(St. Olaf's Church)でした。 入口から塔の内部へ進むと、石造りの階段は薄暗く、まるでTVゲームのダンジョンを進むような雰囲気です。 途中からは急な螺旋階段になり、足元の感覚だけを頼りに一段一段を確かめるように上りました。 やがて扉を抜けて外に出ると、そこは屋根のふもと。青緑に風化した金属葺きの屋根が目の前に広がり、単純な円錐に見えた尖塔も、展望台付近には意匠が施されていることに気づきました。足場は驚くほど狭いのに、視界は一気に開け、赤い屋根の旧市街から港、遠い海までを一望できました。展望台までは約232段。おおよそ60メートルの高さに設けられたこの回廊が、塔の上りつめた者だけに許されるご褒美の舞台でした。 教会の起源は中世にさかのぼります。12世紀に創建されたと伝わり、献堂先はノルウェー王で聖人となったオーラヴ2世です。タリンがデンマークの支配を受ける以前、北欧の商人・住民の信仰の中心でもあったとされ、13世紀の文献に名前が現れます。宗教改革期にはルター派の教会となり、戦後のソ連期を経て、現在はバプテスト教会として礼拝が続けられています。 この尖塔には、いくつもの伝承やドラマが重なっています。16世紀末に非常に高い尖塔が築かれ、かつて「世界一高い建物」と称されたことがありました。ただし当時の度量衡の解釈などをめぐって研究者の見解は分かれ、現在は「ヨーロッパ屈指の高塔だった」という理解が穏当でしょう。現在の尖塔の高さはおよそ123〜124メートルで、昔日の“最高”伝説を今に伝えるランドマークであり続けています。 高く細い塔は何度も落雷に見舞われ、1625年と1820年には火災で尖塔や屋根が焼失しました。銅や鉛の金属葺きまで燃え広がったと記録され、度重なる再建をへて19世紀に現在の姿が整えられます。風雨にさらされて青緑の肌をまとった屋根の色は、その歴史の厚みを静かに物語っているようでした。 ソ連時代には、この塔が監視・無線通信の拠点として使われたこともあり、宗教建築でありながら都市の記憶を映す「塔」としての役割を担ってきました。旧市街の赤瓦と海の青、そのあいだに立つこの塔は、時代ごとに...

三人姉妹:窓辺のフックが語るエストニアの中世の知恵と暮らし

本日は、ラトビア・エストニア観光の4日目、タリン滞在2日目です。エストニア・タリンの旧市街を歩いていると、中世の雰囲気を色濃く残した建物がいくつも目に入りますが、その中でもひときわ目を引くのが「三人姉妹」と呼ばれる建物です。太っちょマルガレータ(ふとっちょマルガレータの塔)など、市内のランドマークを巡ったあと、この三人姉妹に足を運びました。 三人姉妹は、15世紀から16世紀にかけて建てられたゴシック様式の商人の邸宅が3軒並んだもので、現在はホテルとして使われています。3棟並ぶ姿がまるで仲の良い姉妹のように見えることから、この愛称で呼ばれているそうです。石造りのファサードや、当時の面影を残す窓枠、堂々とした扉のデザインなど、古い時代のタリンの繁栄を感じさせます。 デジカメ時代の撮影では、パノラマ機能がまだ一般的ではなかったため、建物全体を一枚に収めるのは難しく、分割して撮った写真を帰国後に合成したのも良い思い出です。こうした歴史的な建物の外壁を見ていると、ふと気になるのが、建物の高い場所に取り付けられたフックのような金具です。実際、三人姉妹にもそれぞれフックがついていました。調べてみると、これは高層階の荷物や家具を直接外から引き上げたり下ろしたりするための道具で、中世ヨーロッパの商家によく見られる工夫だそうです。当時は階段が狭かったり、重い荷物を室内で運ぶのが大変だったため、このような仕組みが発達したのでしょう。 時代を経て、三人姉妹は姿を変えながらも、その美しさと実用性を保ち続けています。2003年にホテルとして生まれ変わり、旅人を迎え続けていると聞きます。古い石造りの壁の中には、何百年にもわたる商人たちの生活やタリンの歴史が静かに息づいているようでした。 タリン旧市街の散策の途中で、もしこの三人姉妹の前を通りかかったなら、外壁のフックや窓の細部までぜひ目を向けてみてください。時代を超えて今に伝わる知恵や美意識を、そっと感じることができるはずです。 旅程 (略) ↓(徒歩) 太っちょマルガレータ ↓(徒歩) 三人姉妹 ↓(徒歩) 聖オレフ教会 ↓(徒歩) 三人兄弟 ↓(徒歩) Tallinna Linnateater ↓(徒歩) (略) 周辺のスポット 太っちょマルガレータ Tallinn Horse Mill 聖オレフ教会 リンク Historic Hotel i...