外川の港町から歩いて銚子の町なかへ抜ける道すがら、旅の終盤に朱塗りの仁王門が視界に飛び込みました。門をくぐると、境内は五重塔も本堂(飯沼観音)も鮮やかな朱で統一され、冬の淡い光の下でいっそう際立って見えます。まずは本堂で手を合わせ、堂内も拝観しました。磨かれた床に差す光や、ご本尊へ向かう参詣の人の足音が静かに響き、海風の町にある寺とは思えないほど、しっとりとした時間が流れていました。
ここ圓福寺(えんぷくじ)はは坂東三十三観音霊場の第二十七番札所として知られ、古くから「銚子の観音さま」と親しまれてきました。寺伝では奈良時代の神亀五年(728年)、漁師の網に十一面観音像がかかり、これを祀ったのが起こりとされ、そののち弘法大師・空海が開眼供養を行ったと伝わります。海と観音の縁起が、港町の信仰を育んできたことがうかがえます。
門前の賑わいもまた歴史の一部です。坂東札所に数えられたことが銚子の発展を後押しし、観音堂を中心に門前町が形づくられました。海の安全や家内繁栄を願う人々が行き交い、信仰と交易が交差する場として栄えたことを思うと、境内の朱が単なる装飾以上の力を帯びて見えてきます。
戦禍により堂宇の多くは失われましたが、観音信仰は途絶えることなく受け継がれ、現在の建物は戦後に再建されたものです。境内にそびえる五重塔は平成21年(2009)の完成で、総高約33.55メートル。海風を受けながら、どっしりと町を見守る灯台のような存在感がありました。
外川からの長い散策を締めくくるように、朱の回廊を振り返ると、潮の香りと読経の声が混じり合い、銚子らしい音と匂いが胸に残ります。旅の途中でふと立ち寄っただけのつもりが、海から生まれた観音の物語と、門前に息づく人々の営みが静かに重なって、心にしっかり刻まれる訪問となりました。次は季節を変えて、朱の塔に朝日が当たる時間帯にも来てみたいと思います。
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