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日吉大社:比叡山のふもとで出会う神仏習合の風景

滋賀県大津市の日吉大社を訪れました。この日は延暦寺を目的に大津市へ来ており、比叡山上で延暦寺を参拝した後、ケーブルカーでふもとへ下り、その足で日吉大社へ向かいました。比叡山の上から麓へ移動してくると、山上の寺院世界から、山の神を祀る神社の世界へと景色が切り替わっていくようで、同じ比叡山周辺にありながら、また別の信仰の層に触れるような感覚がありました。

日吉大社は、全国にある日吉神社、日枝神社、山王神社の総本宮として知られる神社です。比叡山の麓に鎮座し、古くからこの地域の神を祀る場所として大切にされてきました。特に延暦寺との関係は深く、比叡山に天台宗の一大拠点が築かれてからは、仏教と神道が結びつく山王信仰の中心として発展しました。延暦寺を参拝した後に日吉大社へ向かうと、寺と神社を別々のものとして見るだけではなく、比叡山という大きな信仰空間の中で互いに結びついてきた歴史を自然に意識することになります。

境内に入ってまず感じたのは、その広さと森の深さでした。市街地から大きく離れているわけではありませんが、参道を進むにつれて周囲は木々に包まれ、空気も少し変わっていくように感じました。9月中旬でまだ暑さの残る時期でしたが、森の中を歩いていると、直射日光の強い場所とは違う落ち着きがありました。日吉大社は単に建物を見て回る神社というよりも、山麓の森そのものを歩きながら参拝する場所なのだと思いました。

ケーブルカーの駅から参道に入り、少し進むと、まず印象的な山王鳥居が見えてきました。普通の鳥居の上に三角形の屋根のような形が加わった独特の姿で、初めて見るとかなり目を引きます。この形は日吉大社らしさを象徴するもので、神仏習合の信仰を感じさせる鳥居でもあります。鳥居という神社の入口でありながら、どこか寺院建築の要素も重なっているように見え、延暦寺の麓にある日吉大社らしい造形だと感じました。

森の中の参道をさらに進むと、重要文化財の西本宮楼門に到着しました。楼門はどっしりとした存在感があり、木々に囲まれた境内の中で、神域の中心へ入っていく門として強い印象を残します。日吉大社は多くの社殿を持つ広大な神社ですが、西本宮の周辺に来ると、まず大きな中心にたどり着いたという感覚がありました。

西本宮では、拝殿の奥に本殿がありました。本殿の前には柵があり、近づくことはできませんでしたが、建物そのものを見ることができました。本殿がまったく見えない神社も多い中で、ここでは拝殿と本殿の関係を視覚的に捉えることができ、神社建築の構成を意識しながら参拝できたのが印象的でした。西本宮本殿は日吉造とも呼ばれる独特の建築形式を伝える貴重な建物で、現在は国宝に指定されています。華やかに飾り立てるというよりも、森の中に静かに建つ姿に重みがあり、長い歴史を背負っていることが自然に伝わってきました。

西本宮の祭神は大己貴神で、日吉大社の信仰の中でも重要な位置を占めています。一方で、東本宮には大山咋神が祀られています。大山咋神は比叡山の神としても知られ、古くからこの山と深く結びついてきた神です。日吉大社を歩いていると、西本宮と東本宮という二つの大きな中心があり、それぞれが独立した存在感を持ちながら、境内全体として一つの信仰空間を形づくっていることが分かります。

西本宮を参拝した後は、隣の宇佐宮へ向かいました。宇佐宮も本殿と拝殿が並ぶように建てられており、西本宮と同じような構成を感じることができました。ただ、こちらでは本殿の前まで近づくことができ、建物をより近い距離で眺めることができました。広大な境内の中に複数の社殿が点在しているため、歩くたびに少しずつ雰囲気の違う神域へ移動していくような感覚があります。

さらに進んで白山宮でも参拝しました。白山宮という名前からは、加賀の白山信仰とのつながりも感じられます。日吉大社の境内には、中心となる西本宮・東本宮だけでなく、さまざまな神々を祀る社があり、山岳信仰や地域信仰が重なり合ってきた歴史を思わせます。比叡山麓という場所は、古代から神聖な山を背景にして人々の信仰が積み重なってきた土地であり、境内を歩いていると、その重層性がよく分かります。

白山宮からしばらく森の中の参道を進むと、東本宮楼門に到着しました。西本宮から東本宮へ向かう道は、同じ境内の中でありながら、少し山の奥へ進んでいくような印象がありました。東本宮楼門をくぐった先には、本殿や拝殿だけでなく、樹下宮などもありました。社殿が一つだけ建っているのではなく、いくつもの社がまとまって配置されているため、ここにも一つの小さな神社世界が広がっているようでした。

東本宮本殿も国宝に指定されている建物で、西本宮本殿とともに日吉大社を代表する社殿です。日吉大社の建物は、いわゆる観光地的な派手さよりも、森の中で長く守られてきた静かな力強さが魅力だと思います。参拝していると、社殿の造形だけでなく、周囲の木々、参道の曲がり方、楼門をくぐる感覚などが一体となって、神社の印象をつくっていることに気づきます。

日吉大社には神の使いとして猿も大切にされています。「神猿」と書いて「まさる」と読むことがあり、「魔が去る」「勝る」に通じる縁起のよい存在とされています。比叡山や日吉大社の山王信仰を考えると、動物や山の自然もまた信仰の一部として受け止められてきたことが分かります。森の中を歩く日吉大社では、こうした自然と信仰の近さがとてもよく似合っていました。

東本宮から参道を南へ向かい、重要文化財の二宮橋にも行きました。石造の橋は、社殿とはまた違う見どころです。神社の境内では、門や本殿、拝殿に目が向きがちですが、橋や参道もまた神域を構成する大切な要素です。水の流れを越える橋には、日常の空間から神聖な場所へ移る境界のような意味も感じられます。二宮橋を見たことで、日吉大社の境内が建物だけでなく、道や橋、森全体で成り立っていることをあらためて実感しました。

今回歩いた場所を後で公式サイトなどで確認すると、西本宮エリア、東本宮エリア、大宮橋エリアにあたるようでした。しかし、日吉大社の境内は実際にはさらに山の奥まで広がっており、金大巌へ向かう道もあります。金大巌は日吉大社の信仰の原点に関わる場所とされ、山そのものを神聖なものとして祀ってきた古い信仰を感じられる場所です。今回は9月でまだ暑さが残っていたこともあり、そこまでは行きませんでしたが、少し涼しい時期にあらためて訪れ、より奥の神域まで歩いてみたいと思いました。

日吉大社を参拝して印象に残ったのは、延暦寺の後に訪れたことで、比叡山の歴史がより立体的に見えてきたことです。山上の延暦寺では仏教の大きな歴史を感じ、麓の日吉大社では、山の神を祀る古い信仰と、そこから発展した山王信仰の世界に触れることができました。寺院と神社を別々に訪れるだけでは見えにくいものが、同じ日に続けて歩くことでつながって見えてきます。

広大な森の中に、西本宮、宇佐宮、白山宮、東本宮、橋や参道が点在する日吉大社は、一つの建物を目的に訪れるというより、境内全体を時間をかけて歩く神社です。山王鳥居の独特な姿、楼門の重厚さ、本殿と拝殿の配置、森の中を進む参道、そして石橋の静かな佇まいが、それぞれ違う角度からこの神社の歴史を語っているようでした。

この後は、電車で三井寺へ向かいました。延暦寺から日吉大社、そして三井寺へと歩みを進める一日は、大津という土地が持つ宗教史の厚みを感じる旅でもありました。琵琶湖のほとりに広がる大津は、単なる通過点ではなく、古代から中世にかけての信仰と政治、文化が重なり合った場所です。その中でも日吉大社は、比叡山の麓で長い時間を受け止めてきた、森の中の大きな神域でした。

旅程

(略)

↓(徒歩)

比叡山延暦寺

↓(坂本ケーブル)

日吉大社

↓(徒歩)

坂本比叡山口駅

↓(京阪石山坂本線)

三井寺駅

↓(徒歩)

三井寺

↓(徒歩)

大津市歴史博物館

↓(徒歩)

東寺/観智院

↓(徒歩)

京都駅

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  • 比叡山延暦寺

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  • 信楽焼
  • 鮒ずし

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