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玉川大学教育博物館:歴史の中の教室を歩く、教育をめぐるまなざし

今月から学芸員の勉強をするために玉川大学の通信教育課程に入学しました。本日、初めて玉川大学のキャンパスに足を運び、教育博物館を訪れました。キャンパスを訪れるのは初めてで、今後のオフラインスクーリングのためにキャンパスや周辺の店を見る目的もあり、胸が高鳴る思いでした。

博物館では、特に第一展示室の「教育史」に焦点を当てて見学しました。展示室に足を踏み入れると、縄文時代の勝坂式土器や古代遺跡の出土品が目に飛び込んできました。人類が文字を持つ以前から、技術や知識を伝えてきたことを物語る遺物に、教育の根源的な意味を感じます。

展示は江戸時代の教育へと進み、幕府の直轄機関である昌平坂学問所(しょうへいざかがくもんじょ)や湯島聖堂(ゆしませいどう)が紹介されていました。儒学を中心とした学びが、武士たちの教養形成に大きな役割を果たしていたことがよくわかります。一方で、蘭学や国学も発展していたことから、当時の知識体系が意外にも多様だったことに驚かされました。

藩校の資料も豊富で、水戸藩の弘道館(こうどうかん)や庄内藩の致道館(ちどうかん)、津和野藩の養老館(ようろうかん)など、各地で特色ある教育が行われていたことが伝わってきます。貧しい者にも無償で藩校出版物を配布していたという話には、当時の教育への情熱と社会的意義を感じずにはいられませんでした。

さらに、私塾や寺子屋にもスポットが当てられており、広瀬淡窓(ひろせ たんそう)の咸宜園(かんぎえん)や緒方洪庵(おがた こうあん)の適塾(てきじゅ)、吉田松陰の松下村塾(しょうかそんじゅく)など、民間で営まれた教育の力強さに心を打たれました。特に寺子屋の起源が室町時代後期の寺院教育に遡ると知り、日本の教育文化の奥深さに改めて感動しました。

また、江戸時代後期の科学の発展を伝えるコーナーも興味深かったです。『解体新書』に代表される医学書や、地球説略(ちきゅうせつりゃく)、植物啓原(しょくがくけいげん)など、学問の成果が具体的な形で紹介されており、知識の探求が時代を超えて続いてきたことを実感しました。

展示は明治以降の近代教育にも及びます。学制や小学校令の制定による教育制度の整備、国定教科書の登場など、国家主導の教育改革が進められた様子が丁寧に紹介されていました。その一方で、植民地支配下での日本語教育という重いテーマにも触れられており、教育の光と影の両面を考えさせられます。

新教育運動の展示も印象に残りました。ヨーロッパにおける田園教育塾やビデールズ校の紹介とともに、日本で新たな教育を志向した谷本富や沢柳政太郎たちの取り組みが取り上げられています。子どもの個性を尊重し、全人教育を目指した彼らの理念は、まさに玉川学園の創立者である小原國芳の精神にもつながっていました。

教育とは知識を与えるだけではなく、人格を育てる営みであり、常に社会の変化と向き合いながら発展してきたものだという思いを新たにしました。

なお、第二展示室には宗教画や現代美術の展示もありましたが、今回は自分にはまだ早いと感じ、あえて深追いせずに引き上げました。今後、もっと美術や宗教と教育のつながりについて理解を深めたうえで、改めて向き合いたいと思っています。

初めて訪れた玉川大学のキャンパスで、教育の歩みをたどる豊かな時間を過ごすことができました。この体験を糧に、これからの学びをさらに深めていきたいです。

旅程

玉川学園前駅

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