徳島県三好市にある阿波池田うだつの家 たばこ資料館を訪れました。
香川・徳島観光の2日目で、この日は大歩危・小歩危などを巡るバスツアーを予約していました。朝、ツアーが始まるまで少し時間があったため、阿波池田駅の周辺を歩いてみることにしました。その途中で訪れたのが、阿波池田うだつの家 たばこ資料館です。
現在では山や渓谷の観光地という印象が強い三好市ですが、かつて阿波池田はたばこ産業で大いに栄えた町でした。江戸時代から周辺の山間部では「阿波葉」と呼ばれる葉たばこの栽培が盛んに行われ、幕末から明治時代にかけては「阿波刻み」と呼ばれる刻みたばこの生産が発展しました。最盛期には池田の町に約100軒もの民営のたばこ工場があったといいます。
資料館となっているのは、かつてたばこ製造業で栄えた旧真鍋家の建物です。三好市の指定有形文化財にもなっており、建物の外には「うだつ」が設けられています。うだつは本来、隣家との間に設けられた防火のための袖壁ですが、造るには多額の費用が必要だったため、次第に商家の財力を示すものにもなりました。阿波池田の町には、たばこ産業で財を成した商家が競うように造ったうだつが現在も残っています。
館内に入ると、昔のたばこ屋の店先が復元されていました。現代では見ることのなくなった商売の姿が再現されているため、単に古い道具を見るよりも、かつての町の日常を想像しやすくなっています。
たばこを生産するための道具も数多く展示されていました。葉たばこを細かく刻むための機械などを見ると、現在では完成した商品として目にすることがほとんどのたばこも、かつては地域の人々がさまざまな工程を経て作る重要な産業だったことが分かります。旧刻みたばこの作業場そのものが資料館として利用されており、製造に使われた器具が保存されています。
特に興味深かったのが、平田船の模型です。平田船は吉野川を使ってたばこを運んでいた船で、阿波池田のたばこ産業が周辺の山間部だけで完結するものではなく、川の交通と結びついた商業であったことが分かります。三好市観光協会のまち歩き資料にも、吉野川を下ってたばこを運んでいたことが紹介されています。
たばこの資料だけでなく、建物そのものにも見応えがありました。室内にはさまざまな書や豪華な襖絵があり、たばこ産業によって栄えた商家の豊かさが感じられます。単なる産業資料館というより、当時の豪商の暮らしまで一緒に見ることのできる場所でした。
古いキセルや歴代のたばこのパッケージなども展示されていました。パッケージを眺めていると、たばこが嗜好品であると同時に、その時代のデザインや社会を映す商品だったことも分かります。
さらに、昭和時代の東京オリンピックに関連したたばこのポスターまでありました。幕末や明治の産業史から昭和の広告文化まで、一つの「たばこ」という商品を通して時代の変化をたどれるのが面白いところです。
そのほかにも古い人形劇の人形など、たばこと直接関係があるのか分からない資料まで展示されていました。豪商の家に長く伝わってきた品々なのかもしれません。産業の歴史だけではなく、この家と町に蓄積されてきたさまざまなものを見ているような感覚になりました。
もともとはバスツアーが始まるまでの空き時間を使い、少し立ち寄ってみる程度のつもりでした。しかし実際に入ってみると、たばこの製造道具、流通、広告、商家の暮らし、建築など内容は予想以上に豊富でした。
まだじっくり見たい展示が残っていましたが、そろそろバスツアーの集合時間です。名残惜しいものの見学を切り上げ、阿波池田駅へ戻りました。
大歩危や祖谷を訪れる際には通過点になりがちな阿波池田ですが、少し町を歩くだけでも、山間の交通の要衝として栄え、たばこ産業によって大きな富が生み出されていた歴史が見えてきます。予定の合間に偶然立ち寄った資料館でしたが、阿波池田という町を見る目が少し変わる、思いがけず充実した朝の見学となりました。
旅程
ホテル
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うだつの町並み
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阿波池田駅
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