チュニジア・カルタゴにあるAncient Theatre of Carthageを訪れました。
チュニジア観光の2日目です。この日は朝からカルタゴの遺跡を巡り、ビュルサの丘やアントニヌス浴場などを見た後、古代劇場へやって来ました。
目の前に現れたのは、石造りの客席が半円形に広がる大きな劇場です。ギリシアの古代遺跡などで見かける劇場を思わせる姿で、客席が舞台を包み込むように配置されています。こうした半円形の客席はギリシア劇場から受け継がれた形式ですが、ローマ時代にも劇場建築の基本的な形として用いられました。
カルタゴというと、ハンニバルやポエニ戦争で知られるフェニキア系の都市国家をまず思い浮かべます。しかし、紀元前146年に第三次ポエニ戦争でローマに破壊された後、カルタゴはローマ都市として再建されました。その後はローマ帝国のアフリカ属州の中心都市となり、浴場や劇場、円形闘技場など、巨大な公共施設を備えた都市へと発展していきました。現在のカルタゴ遺跡には、ポエニ時代だけでなく、ローマ、ヴァンダル、初期キリスト教、イスラムなど、異なる時代の痕跡が重なっています。
この劇場も、そうしたローマ時代のカルタゴを代表する施設の一つです。現在確認できる劇場は、考古学的研究から2世紀半ばごろに建設されたものと考えられています。客席部分は直径100メートルを超え、1万人ほどを収容できる規模だったとされています。古代には演劇だけでなく、舞踊や喜劇、さらには哲学に関する催しなども行われ、北アフリカ出身の著述家アプレイウスもここで講演したと伝えられています。
ただし、現在目にしている劇場のすべてが、そのまま古代から残っているわけではありません。遺構は20世紀初頭に発掘され、最初の部分は約8メートルもの土の下から見つかりました。発見された古代の構造物は劇場全体からすればわずかで、その後かなり大規模な復元が行われています。しかも発掘が始まって間もない1906年には、すでにここで再び公演が行われるようになっていました。
訪れたとき、特に気になったのが舞台です。古代遺跡の中に、金属製の格子状の構造物が床のように組まれ、その一部にはパネルがはめ込まれていました。「もしかすると、ここに全面的に床を設置して、現在も劇場として使っているのではないか」と思いながら眺めました。
これはかなり当たっていたようです。この古代劇場は現在もカルタゴ国際フェスティバルの会場として使われ、音楽や演劇、舞踊などが上演されています。そのため、照明や音響、舞台装置を支える現代の設備も設置されています。2019年のユネスコの調査報告にも、劇場には公演用の技術設備があり、舞台部分などの保護や整備が進められていることが記されています。私が5月に見た金属製の骨組みも、こうした現代の公演設備の一部だった可能性が高そうです。
古代劇場を「昔の姿のまま保存する」のではなく、約2000年前と同じように人々が集まる場所として使い続けているところが面白く感じられます。復元や現代設備が多ければ、純粋な遺跡として見た場合には難しい問題もあります。しかし、古代に演劇や音楽を楽しんだ場所で、現代の人々も舞台を楽しんでいると考えると、これはこれで非常にカルタゴらしい遺跡の残り方なのかもしれません。
客席の向こうには、Malek Ibn Anas Mosqueの高いミナレットも見えていました。このモスクは2003年に完成した比較的新しい建物です。2000年近く前のローマ劇場の向こうに現代のイスラム建築が見える風景は、カルタゴという場所に積み重なった長い歴史を象徴しているようにも見えました。
劇場を見学した後は、Ancient Amphitheatre of Carthageへ向かいました。「Theatre」と「Amphitheatre」は名前が似ていますが、古代ローマでは性格の異なる施設です。こちらの劇場が半円形の客席を持ち、演劇や音楽などを楽しむ場所だったのに対し、次に向かった円形闘技場では、剣闘士の試合や野獣を使った見世物などが行われました。
アントニヌス浴場から劇場へ、そして円形闘技場へと巡っていると、カルタゴが単なる遺跡の集まりではなく、かつて多くの人が暮らし、入浴し、演劇を見て、さまざまな娯楽を楽しんでいた巨大な都市だったことが、少しずつ実感できるような気がしました。古代の用途を残しながら、今も舞台として使われているこの劇場は、その中でも特に過去と現在の距離が近く感じられる場所でした。
旅程
ホテル
↓(徒歩)
↓(タクシー)
↓(徒歩)
↓(徒歩)
↓(タクシー)
Basilica of Damous El Karita
↓(タクシー)
↓(タクシー)
Ancient Amphitheatre of Carthage(カルタゴ古代円形闘技場)
↓(タクシー)
14th January Square
↓(徒歩)
Ibn Khaldoun Statue
↓(徒歩)
コメント
コメントを投稿