ハンガリーのブダペストを観光した際、ブダ城地区にあるChurch of Saint Mary Magdalene(聖マグダラのマリア教会)を訪れました。
最初に目を引いたのは、何といってもその高さでした。周囲の建物と比べても非常に縦に細長く、石造りの塔が空へ向かって伸びています。ブダ城地区を歩いていると遠くからでもよく見え、自然と目印になるような建物でした。
ただし、現在ここに残っているものは、厳密には教会全体ではありません。かつて存在した聖マグダラのマリア教会の大部分は失われ、現在では主にゴシック様式の鐘楼と教会の遺構が残っています。13世紀、モンゴル軍の侵攻後にブダの城塞都市が整備されていくなかで建てられた教会で、文献上では1257年にはすでにその存在が確認されています。その後15世紀にかけて拡張され、現在残る塔も中世の教会の重要な部分でした。
近くで見ると、塔の壁は均一な石の色ではありません。白っぽい石の中に赤褐色の部分があったり、表面が剥がれ落ちたように見える場所があったりします。2018年に見たときには、長い年月の間に表面が傷んでしまった建物なのだろうと思いました。
しかし、この不揃いな外観は、単なる老朽化だけではなさそうです。この教会は何度も戦争や改築を経験しており、中世の石材、後世の煉瓦、修復された部分などが重なっています。特に第二次世界大戦末期の1944~45年のブダペスト包囲戦では大きな被害を受けました。戦後には修復計画もありましたが、1950年代に教会本体の大部分が取り壊され、最終的に塔など限られた部分だけが残されました。現在の姿そのものが、ブダペストの複雑な歴史を刻んだものといえます。
この教会の歴史で興味深いのが、ブダ城地区に暮らしていた人々との関係です。中世のブダにはドイツ系住民とハンガリー系住民が暮らしており、現在のマーチャーシュ聖堂にあたる聖母教会は主としてドイツ系住民が利用し、聖マグダラのマリア教会はハンガリー系住民の教会として発展したとされています。15世紀にはハンガリー系住民の独立した教区としての性格も強くなりました。
さらに1541年にブダがオスマン帝国の支配下に入ると、この教会はしばらくキリスト教徒に残された教会となり、カトリックとプロテスタントが内部を分けて使用した時期もありました。その後はイスラム教の礼拝施設に転用され、1686年にハプスブルク側がブダを奪回した際にも大きな被害を受けています。支配者や宗教が変わるたびに建物の役割も変化してきたことになります。
18世紀にはバロック様式の教会として再建され、1792年にはここでフランツ2世がハンガリー王フランツ1世として戴冠しました。オスマン帝国の進出後、長くプレスブルク、現在のブラチスラヴァで行われていたハンガリー王の戴冠式が、このときブダで行われたことには大きな意味があります。19世紀にはブダ城の駐屯軍教会としても使われるようになりました。
こうした歴史を知ってから改めて考えると、私が「非常に縦に細長い教会」と感じたのも当然でした。実際には巨大な教会のうち、最も高い塔がほぼ単独で残されていたからです。地上に残された教会の輪郭と塔を合わせて眺めれば、かつてここにもっと大きな教会堂が広がっていたことが想像できます。
周辺にはいくつかの記念碑やモニュメントもあり、城地区らしく、歩いているだけで異なる時代の歴史に次々と出会います。石の色がまだらになった塔も、きれいに復元された歴史的建造物とはまた違い、破壊や改築を繰り返してきたブダペストの歴史をそのまま残しているように感じました。
このあと、私はマーチャーシュ聖堂へ向かいました。今になってみると、中世にハンガリー系住民の教会として発展した聖マグダラのマリア教会から、主にドイツ系住民が利用した聖母教会、現在のマーチャーシュ聖堂へ歩いたことになります。
当時はそこまで意識せずに歩いていましたが、ほんの短い移動の中に、中世ブダの二つの教会と二つの共同体の歴史が重なっていました。遠くからも目立つ一本の古い塔は、単なる教会の遺跡ではなく、モンゴル侵攻、オスマン帝国支配、ハプスブルク時代、そして第二次世界大戦と社会主義時代まで、ブダペストが経験してきた長い歴史を今に伝える建物でした。
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Budavári Evangélikus Templom és Gyülekezet
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